「抵当権設定契約証書」用語解説集
- 1.抵当権
- 2.抵当権設定者
- 3.債務者
- 4.順位
- 5.損害金
- 6.日割計算
- 7.抵当権者
- 8.登記(第1条)
- 9.不動産登記簿の謄本(第1条)
- 10.抵当権についての各種の変更の合意(第1条)
- 11.借地権(第2条・第4条)
- 12.抵当権に影響を及ぼす権利(第2条)
- 13.第三者(第2条)
- 14.滅失・毀損・収用(第2条)
- 15.法定の順序(第2条)
- 16.保険金請求権(第3条)
- 17.抵当権者特約条項(第3条)
- 18.債権保全火災保険契約(第3条)
- 19.借地借家法第22・23・24条の定期借地権(第4条)
- 20.借地借家法第10条第2項の所定の掲示(第4条)
- 21.法定の手続き(第5条)
- 22.代位(第8条)
- 23.免責(第8条)
- (以下は根抵当権設定契約書に使用されている用語です。)
- 1 .抵当権
「抵当権」とは、債権者が担保の目的物(例えば、土地・建物などの不動産)を預かることなく、担保の提供者(以下、「抵当権設定者」といいます)に、担保の目的物をそのまま使用していただいたうえで、万一借主が弁済しない場合、その物件を売却しその代金より優先的に弁済を受けることができる権利をいいます。なお、抵当権に関わる権利の設定、消滅などの事実関係を契約当事者以外の第三者に示すため、債権者と抵当権設定者は共同で法務局に登記をおこないます。 - 2 .抵当権設定者
担保物件(抵当権が設定される土地や建物)の提供者のことを、「抵当権設定者」といいます。 - 3 .債務者
銀行との金銭消費貸借契約の借主のことを「債務者」といいます。銀行に対して借入金債務を負っているため、債務者となります。これに対して、銀行は債権者となります。 - 4 .順位
同一の不動産に複数の抵当権が存在することがありますが、その抵当権の優劣は登記の前後(順位)によって決定されます。抵当権設定契約証書には抵当権の順位を記載します。 - 5 .損害金
借主が約定どおり借入金の弁済を行わない場合、入金日までの期間について、返済が遅延している元金に対し年14%の割合で日割計算された金額を、違約金(債務の不履行があった場合に支払う旨を、債務者が債権者に対しあらかじめ約束した金銭)として銀行にお支払いいただくものを「損害金」といいます。 - 6 .日割計算
1か月に満たない端数日数の利息を計算する方法で、年利率×日数/365により計算します。 - 7 .抵当権者
「抵当権者」とは、不動産登記簿の乙区欄に抵当権者(債権者)として記載されるもので、銀行を指します。債務不履行の場合など、ほかの債権者に優先して弁済を受けられる権利を有します。 - 8 .登記(第1条)
抵当権(項番1参照)の成立を第三者に公示し、対抗力を付与するために、不動産登記簿に抵当権設定の登記をおこないます。「登記」とは、法務局に備え付けられている登記簿に一定の事項を記載することです。登記の受付番号や順位番号により、権利関係の優劣が決まります。住宅ローンで抵当権が設定される場合は、その目的となる不動産の登記簿に抵当権が設定されている旨が記載されます。
なお、登記の手続きは司法書士に依頼することが一般的であり、法務局での手続きに必要な費用(登録免許税、登記簿閲覧、登記簿謄本交付等)のほか司法書士への手数料・報酬も必要となります。 - 9 .不動産登記簿の謄本(第1条)
登記簿とは、登記所に備え置かれている一般に公開された帳簿のことをいいます。その帳簿には種類がありますが、抵当権にかかわるのは不動産登記簿です。登記簿は持ち出しができないため、閲覧したりその写しを取ることができ、この写しのことを「不動産登記簿の謄本」といいます。 - 10 .抵当権についての各種の変更の合意(第1条)
抵当権は設定された後も、抵当権設定者と抵当権者の合意により債務者の変更等その内容が変更される場合があります。この場合、変更内容を第三者に公示し、対抗力を付与するために登記手続きをおこないます。 - 11 .借地権(第2条・第4条)
建物の所有を目的として土地を借りる権利のことで、地上権と賃借権とがあります。地上権は、地主の承諾なく譲渡等ができますが、賃借権は、地主の承諾がなければ譲渡等ができないなどの点が異なります。定期借地権(項番19参照)を除く普通借地権は、最初の存続期間は最低30年で、1回目の更新では最低20年、2回目以降は最低10年とされています。借地上の建物に抵当権を設定した場合、その効力は借地権にもおよびます。 - 12 .抵当権に影響をおよぼす権利(第2条)
不動産には色々な権利関係が存在しますが、例えば土地や建物を第三者に賃貸していると価値が変動するなど、銀行の抵当権に影響がおよびます。そのため、このような権利関係が存在する場合は、あらかじめ銀行に通知していただくことになります。 - 13 .第三者(第2条)
特定の法律関係において、これに関与する当事者以外の者のことを「第三者」といいます。抵当権設定契約の場合には、抵当権設定者と抵当権者を契約の当事者といい、それ以外の者を第三者といいます。 - 14 .滅失・毀損・収用(第2条)
担保の目的物としてお預かりしている不動産や株式等の一部破損を「毀損」、全部破損(担保物がなくなること)を「滅失」といいます。
「収用」とは、国や自治体が公共事業のためなどの理由により不動産などを強制的に買い取ることをいいます。通常はその対価として金銭が支払われます。 - 15 .法定の順序(第2条)
一般的に債務者が債務全額に満たない弁済をおこなう場合、弁済の内容について債権者と合意していないときに適用される、法律(民法)で定められた充当の順序を「法定の順序」といいます。法律によれば、(1)同一債務については、費用・利息・元本の順で充当すること、(2)複数の債務がある場合には、返済期限の到来した債務を優先し、ともに返済期限が到来している債務間では借入金利の高い方などの弁済にあてることとしています。しかし、法律の規定どおりの弁済の充当方法によると、借主および銀行にとって有利とはならない場合があることから、必ずしもこれによらないことを約定しています。 - 16 .保険金請求権(第3条)
抵当物件のうち建物等で損害保険の対象となる場合、抵当権設定者には、保険会社と損害保険契約を結んで抵当物件に保険を付保していただきます。質権を設定した場合には、抵当物件で保険事故が発生した場合、質権者は保険契約にもとづいて保険金の支払いを保険会社に請求することができます。この保険金を請求できる権利を「保険金請求権」といいます。 - 17 .抵当権者特約条項(第3条)
保険金請求権に質権を設定する以外に、抵当権設定者が抵当権者に対して保険金請求権を譲渡することにより担保とする方法もあります。その際、保険会社と抵当権者の間で取り決めをした特約を「抵当権者特約条項」といいます。 - 18 .債権保全火災保険契約(第3条)
「債権保全火災保険契約」とは、銀行が債権者として、債権の回収に必要な措置として保険会社と保険契約を締結するものです。銀行が保険会社へ保険料を支払うことになりますが、この保険料やその他の費用については損害金も含め、借主と抵当権設定者は連帯してお支払いいただくことになります。 - 19 .借地借家法第22・23・24条の定期借地権(第4条)
「定期借地権」とは、あらかじめ定めた期間しか存続しない借地権のことをいいます。代表的な一般定期借地権は、借地期間を50年とすることにより認められている定期借地権の一種で、つぎの点が大きな特徴です。(1)契約の更新をしない。(2)建物を再建築しても存続期間を延長しない。(3)建物買取請求権を行使しない旨を定めることができる。
なお、本特約により、当初の契約期間が満了と同時に借地権が消滅することが法律上保証されることとなっています。 - 20 .借地借家法第10条第2項の所定の掲示(第4条)
借地契約期間中に建物が滅失した場合、借地権は消滅しませんが、借地権の設定登記等がない場合、第三者に借地権があることを主張できなくなります。このため法律(借地借家法第10条第2項)では、その建物を特定するために必要な事項、滅失のあった日および建物を新築する旨の表示を土地上の見やすいところに掲示することにより、第三者に対して借地権を主張できることとされています。 - 21 .法定の手続き(第5条)
担保の種類に応じて各種法律に定められている担保処分の手続きを「法定の手続き」といいます。ところが一般的に法定の手続きでは、価格が低下し、また処分に要する時間が長引くなど、抵当権設定者・銀行双方の利益にならないことがあります。
そこで銀行は、抵当権設定契約時に、担保を法定の手続きによらず抵当権設定者との合意のうえ任意の方法で売却し、その売却代金から残っている債務額(残債務額)および売却にかかった費用等を回収できるようにしています。例えば、担保不動産を処分する場合に、相応な条件で当該物件を購入したいという第三者が現れたときには、抵当権設定者・銀行双方の合意のもとに法律に基づく不動産競売手続きをとらずに、第三者に任意に売却することにより、双方にとっての経済的・時間的負担を軽くすることができます。 - 22 .代位(第8条)
借主の銀行に対する返済が遅延した場合などに、保証人が借主に代わって保証債務を履行したり、抵当権設定者が抵当物件を売却して弁済したりすることによって、銀行が有する担保権その他の権利が移転することを「代位」といいます。 - 23 .免責(第8条)
「免責」とは、債務の弁済責任を免除されることをいいます。抵当権設定契約においては、保証人や抵当権設定者の銀行に対する弁済責任の免除をいいます。
(以下は根抵当権設定契約書に使用されている用語です。)
- (1)根抵当権
抵当権(項番1参照)は特定の債権のみを担保する権利であるのに対して、「根抵当権」は継続的な取引から発生する複数の債権を一定の極度額を限度として担保する権利のことをいいます。抵当権同様、第三者に根抵当権に関わる権利の設定・消滅などの事実関係を公示するため、債権者と根抵当権設定者は、共同で法務局に登記をおこないます。 - (2)根抵当権設定者
担保物件(根抵当権が設定される土地や建物)の提供者のことをいいます。 - (3)共同担保(第1条)
同じ債権の担保として、複数の不動産に根抵当権など同一の担保権を設定することを「共同担保」といいます。
例えば、A物件とB物件などの複数の不動産を担保として提供していただく場合、それぞれに同一の担保権を設定し、共同担保である旨を登記することをいいます。共同担保としてA、B物件に第1順位で極度額1,000万円の根抵当権を設定した場合、根抵当権者はA、B物件のいずれの売却代金からでも、1,000万円に達するまで優先的に弁済を受けることができます。 - (4)確定期日(第1条)
根抵当権について、その担保すべき元本が確定(項番⑤参照)する特定の日を前もって定めた場合、その日を「確定期日」といいます。確定期日の到来により根抵当権が確定すると、担保すべき元本はその日に現存する債権に限定されます。確定期日の定めは、根抵当権者と根抵当権設定者との合意によってなされますが、根抵当権設定と同時または設定後確定前であれば定めることができます。確定期日は、これを定め、またはその変更をした日から5年内の日であることを要します。
確定期日を定めるか否かは根抵当権者と根抵当権設定者の自由ですが、長期にわたって根抵当権を利用するため、当行では確定期日の定めはおこなっておりません。 - (5)元本の確定(第3条)
当該根抵当権について担保すべき元本が具体的に特定される状態を「確定」といいます。根抵当権の元本が確定すると、実質的には特定の債権を担保する抵当権と同じようなものとなります。
したがって、確定前に発生した元本債権およびその元本債権に対し既に発生している利息・損害金等と、確定後にその元本債権から生ずる利息・損害金等の合計金額が極度額の範囲内で担保されることになり、確定後に生ずる元本債権自体は担保されません。また、確定によって債権が特定されるので、被担保債権の範囲、債務者の変更および根抵当権の譲渡や一部譲渡等、担保すべき債権の変更はできなくなります。 - (6)根抵当権の譲渡・一部譲渡(第4条)
「根抵当権の譲渡」とは、根抵当権者の地位を現存する被担保債権から切り離して第三者に移転することをいい、根抵当権の確定前に限り認められる根抵当権処分の1つの形態です。
根抵当権が譲渡されると、譲渡人(もとの根抵当権者)の債権はもはや当該根抵当権では担保されなくなり、譲受人(新たな根抵当権者)があたかも当初より根抵当権者であったのと同様に、その根抵当権を利用して自己の債権を担保させることができます。根抵当権の譲渡は、譲渡人たる根抵当権者と譲受人との合意および 根抵当権設定者の承諾のもとに行ない、第三者に対抗するためには登記が必要です。
なお、根抵当権には「一部譲渡」という形態もあり、一部譲渡により当該根抵当権は譲渡人と譲受人の債権をいずれも担保することになります。
以上