新規開拓成功の鍵はスモールスタート! 進め方とポイントを解説

公開日:2025年7月25日

「新規開拓の必要性は理解しているが、なかなか始められない」「そもそも新規開拓の進め方が分からない」そのような悩みを抱える中小企業の経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、新規開拓の流れや具体的なポイントを解説します。

中小企業の新規開拓の流れ

新規開拓で重要となるのは、自社の強みを最大限に活かした戦略の策定です。特にリソースが限られる中小企業では、既存事業にマイナスの影響を与えることなく、効率的に進める工夫が求められます。

1.自社の強みを踏まえた戦略

新規開拓にあたり、まずは自社の強みを客観的に理解しましょう。その際に有効な手法の1つが「SWOT分析」です。SWOT分析は、自社のビジネスを「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」といった内部環境と、「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の外部環境で整理し、現状を分析します。そのうえで、それぞれの要因を掛け合わせる「クロスSWOT分析」でどのような戦略を取るべきか検討しましょう。

SWOT分析・クロスSWOT分析の詳細は、以下の記事で紹介しています。

同記事で分析した小規模の印刷メーカーを例に、以降のプロセスを検討します。
また、SWOT分析・クロスSWOT分析をもとに、「小ロットに対応できる強みを活かし、個人顧客の印刷を積極的に受注する」戦略を採用することとします。

2.顧客ターゲットを絞る

次に、自社が最も価値を提供できる顧客層を特定します。ターゲットを絞り込むことで、マーケティング戦略がより具体化され、効果的な施策が明らかになります。

ターゲット設定では、顧客を年齢、性別、職業などで分類し、それぞれのニーズや購買パターンを分析します。同時に、自社の商品・サービスとの相性を確認しましょう。そのうえで市場の規模や成長性、競争状況など外部環境を考慮し、ターゲットとするセグメントを決定します。

先に挙げた小規模の印刷メーカーの「個人顧客の印刷を積極的に受注する」戦略を例に考えてみましょう。個人印刷の需要が近年高まっている要因の1つが、クリエイターエコノミー市場の拡大です。個人クリエイターがハンドメイドや同人誌、イラストなどの作品をSNS等で発信し、ファンを獲得、グッズを販売する動きが広がっています。

これらの顧客層について年齢と購買行動でセグメンテーションし分析すると、特に20~30代の若い世代がクリエイティブな活動に積極的に取り組み、SNSで情報を収集する特徴が見えてきました。そこで、次のターゲットにアプローチすることを決めます。

3.適切な参入方法を検討する

ターゲットを明確にしたうえで、商品の参入方法を検討します。販路1つをとっても自社EC、ECモール、SNS販売、実店舗、代理店契約などさまざまな選択肢があります。「自社の商品とターゲットにとって最適な販路はどこか」「販路開拓にかかるコストと見込まれる収益のバランスが適切か」という視点で最適な参入方法を見極めましょう。

前述の印刷メーカーの場合には、SNSでのPR、ユーザー参加型のキャンペーン企画や、クリエイターの集まるイベントへの出展などで顧客の反応やレビューを収集、そのデータをもとに本格的なプロモーションや自社ECに移行するといった戦略が考えられます。

4.PDCAサイクルを回す

市場参入後は、PDCAサイクルを意識しましょう。PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の仮説・検証型プロセスを繰り返すことで、マネジメントの品質を高めるフレームワークです。

Plan(計画)の段階で、「ECで半年間限定の試験販売をおこなう」などの計画と、想定する販売数量等の指標を設定します。次のDo(実行)では、計画に基づいて実際に販売を開始し、あわせて販売数や顧客アンケートによりデータ収集をおこないましょう。Check(測定・評価)では、計画をふまえた評価を実施し、収集したデータからトレンドを分析します。その後、Action(対策・改善)で分析結果をもとに対策を具体化し、改めてPlanから始めます。

PDCAサイクルを繰り返すことで、市場に適応した戦略へブラッシュアップされ、新規開拓成功の確率が高まります。

スモールスタートの3つのメリット

流れを把握した後に、新規開拓の実践に移りましょう。成功の鍵は、最小限のリソースで始める「スモールスタート」です。市場や顧客の反応を見ながら必要な改善を加え、徐々に拡大していくアプローチです。

例えば、ある地元の食品メーカーは新商品を開発した際、まず近隣のスーパー3店舗で試験販売をおこない、購入者アンケートを実施しました。その結果をもとに味やパッケージを改良し、オンラインショップでの販売を開始、最終的には全国の小売店で取り扱いが始まりました。このように一部地域での限定販売や、ポップアップストア、オンラインショップでの試験的な販売から始め、徐々に拡大することをスモールスタートといいます。

ここでは、スモールスタートの3つのメリットをご紹介します。

最小限のリソースで始められる

新規開拓に必要なリソースは、計画実行への資金、遂行する人材、技術など多岐にわたります。特に中小企業ではリソースが限られるケースが多く、初期投資を抑えられるスモールスタートが適しています。

また、戦略策定時にあらかじめ必要なリソースやコストを見積もることが重要です。想定以上にコストがかかることが判明した際には、適宜戦略を見直しましょう。

柔軟に改善できる

スモールスタートでは、実際に顧客と市場から得たフィードバックをふまえて、改善を重ねることができます。最初から大規模な計画を立てると変更にコストを要し、顧客ニーズへの柔軟な対応が困難となります。計画から実施検証までをスピード感をもっておこない、成功の可能性を高めましょう。

撤退リスクが小さい

新規開拓には不確定要素がつきものです。期待どおりに成長できない場合は、撤退の判断も重要です。スモールスタートであれば、撤退時の損失を最小限に抑え、次のチャレンジへの余力を残せます。

新規開拓をサポートする仕組み

自社のリソースのみでの新規開拓が難しい場合は、外部の支援を積極的に活用しましょう。

補助金の活用

中小企業の新規開拓では、資金の工面が大きな課題となることがあります。その際には、補助金や助成金の活用を検討ください。

「中小企業新事業進出補助金」は既存の事業とは異なる、新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資を支援する補助金です。また、「ものづくり補助金」という生産性向上に向けたサービス開発や試作品の開発、生産プロセスの改善をおこなうための設備投資を支援する補助金も設けられています。

検討する新規開拓施策が条件を満たす場合は積極的にご活用ください。

外部の専門家への相談

ノウハウ不足が原因で新規開拓が進まない場合は、外部の専門家や機関の力を借りることも1つの手です。自社の強みや市場の状況に対し、専門的な視点からのアドバイスや、効率的な新規開拓のサポートを得られます。

おもな相談機関としては、商工会や商工会議所、中小企業基盤整備機構、金融機関などがあります。必要に応じてご相談ください。

スモールスタートからの新規開拓挑戦

新規顧客の開拓や市場への参入は、事業の可能性を大きく広げ、企業の成長を促進する重要な取り組みです。一方で、投資に対するリターンが不確実なため、不安を感じて新規開拓をためらう方もいるかもしれません。

そのような場合も、スモールスタートを心がけることで、比較的少ないリスクで新市場への挑戦が可能です。補助金や支援機関など中小企業をサポートする仕組みも積極的に活用することで、負担を軽減しながら効率的に事業を進められるでしょう。新規開拓への一歩を踏み出してみませんか。

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