経営者必見!未来を拓く円滑な事業承継のヒント

公開日:2025年5月22日

近年、中小企業の経営者の高齢化や後継者不足が深刻化しており、事業承継の必要性が高まっています。後継者が不在のまま経営者に万一のことが起きると、会社の存続が危うくなってしまいます。従業員の雇用や会社の資産を守るためにも、早めの対策が重要です。

本記事では、中小企業における事業承継の現状、分類、そして成功のポイントを解説します。

中小企業の事業承継の現状

まずは中小企業における事業承継の現状を確認しましょう。

中小企業庁が2024年6月28日に公開した「事業承継・M&Aに関する現状分析と今後の取組の方向性について」によると、2023年時点の経営者の平均年齢は60.5歳となり、過去最高を更新しています。

また、2023年時点の後継者不在率は、経営者が60代の企業で38%、70代で30%、80代以上で23%。2020年の数値(60代:48%、70代:39%、80代:32%)と比較すると各年代で10ポイントほど改善しているものの、未だに5分の1以上の企業で後継者が不在です。

さらに、帝国データバンクの調査によると、2024年1月から10月までに発生した「後継者難倒産」は455件となり、過去最多の2023年とほぼ同水準で推移しています。このうち、代表者の病気や死亡が原因で倒産に至ったケースは189件と全体の4割を超え、後継者の不在が企業にとって大きなリスクであることが明らかです。

「後継者難倒産」件数推移 「後継者難倒産」(2024年は10月まで) 2013年[1~10月]348件 [通年(1~12月)]411件、2014年[1~10月]283件 [通年(1~12月)]332件、2015年[1~10月]312件 [通年(1~12月)]375件、2016年[1~10月]304件 [通年(1~12月)]354件、2017年[1~10月]284件 [通年(1~12月)]341件、2018年[1~10月]316件 [通年(1~12月)]401件、2019年[1~10月]362件 [通年(1~12月)]460件、2020年[1~10月]375件 [通年(1~12月)]452件、2021年[1~10月]369件 [通年(1~12月)]466件、2022年[1~10月]408件 [通年(1~12月)]476件、2023年[1~10月]463件 [通年(1~12月)]564件、2024年[1~10月]455件 ※「倒産」:負價1000万円以上の法的整理が対象
帝国データバンク「全国「後継者不在率」動向調査(2024年)」より引用および作図

神奈川県の中小企業の現状

では、神奈川県内の中小企業の状況は、どうなっているのでしょうか。

「令和5年度 神奈川県中小企業・小規模企業経営課題等把握事業結果」によると、事業承継の取組状況について「取組中である(検討中含む)」と回答した企業は19.8%、「課題と感じているが、取り組んでいない」と回答した企業は14.5%です。

事業承継の取組状況(N=702) [当面は必要ない]34.3%、[取組中である(検討中含む)]19.8%、[今の事業が自分の代限りになると感じている]15.5%、[課題と感じているが、取り組んでいない]14.5%、[既に事業承継が済んでいる]7.7%、[現在の事業を継続するつもりはない(廃業予定を含む)]7.0%、[その他]1.1%
神奈川県「令和5年度神奈川県中小企業・小規模企業経営課題等把握事業結果」P.29より引用および作図

また、「取組中である(検討中含む)」と回答した企業を対象にした取組の進捗状況は、「後継者候補はいるが、正式に決定していない」が31.9%と最も多く、次いで「後継者は確定しているが、具体的な取組はこれからである」が29.0%を占めています。

これらのデータから、神奈川県内の多くの中小企業が事業承継の必要性を認識しているものの準備が十分に進んでいないことがわかります。

事業承継のおもな分類を解説

企業の持続的な成長のためには、現在の経営者から次世代の経営者へと事業を引き継ぐ、事業承継が不可欠です。事業承継は単に経営権を引き継ぐだけではなく、従業員や資産、さらには経営に不可欠な知的資産承継も含みます。このプロセスを適切に進められるかどうかが、企業の将来を大きく左右します。

事業承継は、大きく分けて「親族内承継」と「親族外承継」の2種類に分類されます。さらに、親族外承継は、社内の役員や従業員に引き継ぐ「従業員承継(内部昇格・MBO・EBO)」と、社外の第三者に株式譲渡や事業譲渡をおこなう「M&A」に分かれます。

中小企業庁 ホームページ「事業承継を知る」内「事業承継の種類」より引用および作図

それぞれの概要や気をつけるべきポイントは下表をご確認ください。

親族内承継について詳しく知りたい方は「親族内承継の実態と実践 成否を分ける4つのポイント」を、M&Aについて詳しく知りたい方は「M&Aをお考えのお客さま」をご覧ください。

中小企業が事業承継を成功させるポイント

では、事業承継を成功させるためには何を意識すべきでしょうか。特に重要なポイントを3つご紹介します。

1.早期に準備を進める

経営者の中には「自分が辞めたら会社がどうなるかわからない」「まだまだ現役で働きたい」と考え、事業承継の準備を後回しにしてしまう方も少なくありません。しかし、突然の病気や事故など予測できない事態が発生すると、会社の存続が危ぶまれる場合もあります。
加えて、事業承継は想像以上に時間がかかるため、計画的に進めることが重要です。後継者の決定以外にも、育成、取引先や従業員への周知、資産や株式の移転等、多くの手続きが発生することから、3~10年の準備期間を設けるのが理想的です。

2.ステークホルダーの理解を得る

従業員や取引先などステークホルダーの理解を事前に得ることも重要です。経営者の急な交代は従業員や取引先の混乱を招き、企業への不信感につながるおそれがあります。

従業員には事業承継の計画や方針を説明する機会を設け、不安を解消しましょう。取引先に対しても後継者を紹介し、承継の理由や選定経緯を丁寧に説明することが大切です。

3.金融機関への早めの相談

事業承継では、株式の移転にともない発生する費用や納税資金の手当てが必要となります。普段から取引のある金融機関に早めに相談しましょう。

メインバンクに事業承継について知られると「今後の資金協力が望めなくなるのではないか」と懸念する方もいるかもしれません。しかし、金融機関にとっても顧客企業の存続や長期的な関係構築の観点から事業承継は重要な課題であり、支援を強化しています。横浜銀行も、税理士や公認会計士と連携した事業承継支援など、サポートを充実させています。

専門家に相談し、無理のない計画を

企業の存続に欠かせない事業承継。後継者不足が深刻化している昨今では、これまで以上に計画的な準備が欠かせません。後継者の確保はもちろんのこと、教育や資産の移転など必要な手続きは多岐にわたります。まずは、専門家や金融機関に相談し、無理のない計画立案から始めましょう。

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