従業員のモチベーションを最大化する「働きがい改革」のすすめ
公開日:2026年4月16日
多様な働き方が広がり、長時間労働の抑制や休暇取得の促進、テレワークの導入、副業推進など、企業の「働きやすさ」は着実に整ってきました。一方で、現場の実情や手応えがともなわないまま施策だけが先行し、従業員が働く価値を実感できる「働きがい」が置き去りになっていないでしょうか。本稿では、従来の働き方改革を「働きやすさ」の整備にとどめず、企業の成長につながる「働きがい改革」へと進化させる視点と手法を、調査結果や理論を踏まえて考察します。
働き方改革が進むいま、問われる“働く価値”
なぜ、いま「働きがい」が重視されるのか
終身雇用の前提が薄れ、転職が身近な選択肢となった現在、企業間で優秀な人材の獲得競争が激化しています。その一方で、人材の流出は企業にとって大きな損失です。人材の流動化が加速する時代に、従業員に「働き続けたい」と思ってもらうための鍵となるのが働きがいの向上です。昨今の人手不足感の高まり、とりわけ中小企業における顕著な不足感は、働きがい向上の取り組みの重要性を高めています。
働き方改革の背景と、日本企業の現状
2019年の「働き方改革関連法」施行以降、多くの企業で長時間労働の抑制、働く場所や時間の柔軟化に向けた取り組みが進みました。しかし、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが実施した「「働き方改革」と組織マネジメントに関する実態調査2019」によると、「従業員の満足度・働きがいの向上」を成果として認識している企業の割合は22.6%と限定的であり、形だけの取り組みや、施策自体が目的化したケースも多いと考えられます。
では、従業員の働きがいはどのようにすれば向上するのでしょうか。
グラフ「雇用管理制度等の実施と「働きがい」との関係」に示すとおり、厚生労働省の調査では、「各自に与えられた仕事の意義や重要性についての説明」「従業員の意見の会社の経営計画への反映」「本人の希望ができるだけ尊重される配置」等の雇用管理をおこなっている企業ほど従業員の働きがいが高い傾向が示されています。
つまり働きがいを高めるためには、適切な雇用管理制度により従業員一人ひとりが意欲的・自律的に働ける職場環境を整えることが重要です。
企業における「働きがい」向上のメリット
では、働きがいを感じる従業員が増えることで企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、3つのメリットをご紹介します。
1.業績の向上につながる
働きがいのある企業は、そうでない企業に比べ、会社の業績が「上がっている」「どちらかといえば上がっている」と回答した割合が高いことが報告されています。
2.離職率の低下・定着率の改善
勤務継続の意向に関する調査では、「今の会社でずっと働き続けたい」と回答した割合が、「働きがいがある」群で50.7%であるのに対し、「働きがいがない」群では11.4%と40ポイント近い差があります。
3.従業員の働く意欲の向上
さらに、働きがいを感じている従業員は、そうでない従業員と比べ、「仕事に対する意欲は高い」ことが報告されています。働きがいを感じていると、業務に対するストレスや疲労を感じにくく、前向きに取り組みやすい状態にあり、その結果、やる気・モチベーションが高まり、主体的な学習や経験の蓄積が進み、一人ひとりの成長につながると考えられます。企業にとって、働きがい向上への取り組みは人的資本を強くする投資に他なりません。
「働きがい」を高めるうえでのポイント
ここまで見てきたとおり、「働きがい」を高めることは企業にとって大きなメリットがあります。では、どうすれば働きがいのある企業になれるのでしょうか。実現に向けた取り組みをご紹介します。
1.経営トップが“自身の言葉”で理念を語り、共感を生む
経営トップからの理念の発信は、従業員のモチベーションを高め、働きがいの源泉になります。加えて、企業の理念と自分の仕事を結びつけることで、従業員は自身の「与えられた仕事の意義・重要性」の理解につながります。
共感できる理念のもとで業務に取り組むことで、成果が得られるほど社会に貢献しているという自己肯定感が増し、働きがいが持続的に高まるという好循環を生みます。メッセージが形骸化していないか、現場に納得感をともなって届いているかを定期的に点検し、階層や職種を越えた対話の場を設けましょう。そして、「私たちが提供できる価値は何か」を等身大の言葉で伝え続けることが重要です。
2.人間関係・コミュニケーションの円滑化
人間関係は働きがいを高めるうえで欠かせないポイントです。
上司・部下の定期的な「1on1ミーティング」によって、期待する役割の具体化、成果の承認、小さな努力の称賛等によりモチベーションを高めることで、働きがいの向上と離職率の低下に寄与します。
業務の相談だけでなく、何気ない日常の声がけや雑談も重要です。「自分の考えに耳を傾けてくれる存在」だと認識されることで信頼が生まれ、チームの雰囲気が改善し、働きがいにつながります。毎日の挨拶のような小さな習慣が、職場の安心感と発信のしやすさを育てます。コミュニケーション活性化により働きがいが向上し、離職率が大幅に低下した事例も確認されています。
3.裁量権を広げ、仕事のやりがいを設計する
担当業務に裁量権が与えられると、企業からの信頼を実感し、働きがいが向上します。創意工夫が業務に生かされることで自己成長の機会も得られ、モチベーションにつながります。定型業務であっても、改善提案や業務への反映といったみずから工夫できる環境を整えることが重要です。
変化の激しい時代に対応し適切な意思決定ができるリーダーを育てるべく、権限委譲や裁量権の拡大に取り組む企業も多くあります。従業員参加型のワークショップで最優秀プロジェクトを新規事業として採用するといった取り組みもおこなわれています。従業員の声に耳を傾け、価値観を理解・受容する姿勢を持つことで、居場所感と帰属意識が高まり、働きがいが向上します。
最後に
少子高齢化にともなう労働人口の減少や文化・価値観の多様化など外部環境の変化を受け、「働きがい」という視点で組織のあり方を見直す必要が出てきています。
単なる労働時間の削減や休日の増加といった「働きやすさ」だけでなく、従業員の「働きがい」を高めることこそが、企業の持続的な成長を支える鍵です。
自社の働き方改革が「働きやすさ」の追求に偏っていないか、今一度点検し、「やりがい」にも目を向けた「働きがい改革」へ取り組みましょう。
参考文献
- 厚生労働省職業安定局雇用開発部雇用開発企画課「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関する調査報告書」(平成26年5月)
- 厚生労働省「働きやすい・働きがいのある職場づくりに関するアンケート調査」2018年
- 厚生労働省「労働経済の分析」2019年
- リクルートマネジメントソリューションズ「働き方改革の現場」2019年
- リクルートワークス研究所「生きがいの実態調査2020報告書」2020年
執筆:浜銀総合研究所
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