新卒学生に「選ばれる企業」になるために!Z世代の採用戦略とは?

公開日:2026年2月26日

少子化による労働人口の減少が進むなか、新卒採用市場は依然として「売り手市場」が続いています。さらに、DXの加速により、学生はスマートフォンを通じて多くの企業の情報に瞬時にアクセスできるようになりました。こうした環境変化により、新卒学生の獲得競争は一層激化しています。
同時に現在の新卒学生にあたるZ世代は、これまでの世代とは異なる経験や環境のもとで育ち、価値観も大きく変化しているため、ニーズを適切に把握しなければ採用活動が成果につながりにくくなっています。本記事では、Z世代の特徴と「企業選びの基準」に着目し、選ばれる企業になるためのポイントを、情報発信(採用広報)と制度整備の両輪で整理します。

採用成功の鍵はZ世代の理解にあり

Z世代の価値観とは?

Z世代は、1990年代中盤〜2010年代序盤に生まれた世代を指します。幼少期からインターネットが身近にある環境で育ち、スマートフォンやSNSを日常的に使いこなすデジタルネイティブとして知られています。
このような背景からZ世代は情報検索能力やネットリテラシーが高く、就職活動でもインターネットを使いこなしています。また、国籍や年齢・性別・職種を問わず、オンライン上でオープンかつフラットな人間関係を築く傾向があり、こうした行動様式は企業選びにも大きく影響しています。

一方で、ITバブル崩壊やリーマンショック、震災、新型コロナウイルスなど、不確実で不安定な社会情勢の中で成長したため、将来に対して比較的シビアな見方を持ちます。コスパ(コストパフォーマンス:費用対効果)やタイパ(タイムパフォーマンス:時間対効果)を重視し、アナログで非効率な慣行を嫌う傾向が強いうえ、SDGsや多様性、環境問題など社会課題への関心も高く、企業の姿勢を慎重に見ています。

学生が本当に見ている4つの企業選びの基準

POINT①個人の成長可能性(「自分のやりたい仕事(職種)ができる」など)

新卒学生が企業を選ぶ際には、「自分のやりたい仕事(職種)ができる」ことを重視する傾向が強まっています。終身雇用の前提が揺らぎ、専門性や成果を前提としたジョブ型の考え方も広がる中で、学生の関心は“どの会社に入るか”だけでなく、“どんな経験やスキルを得て将来の価値を高められるか”へと移りつつあります。そのため、業務の社会的意義、学習・育成の機会といった要素は、企業比較の重要なポイントになります。

POINT②企業の将来性や給与(「業績が安定している」など)

物価上昇や景気の先行き不透明感が続くなか、新卒学生の企業選びでは「業績が安定している」「福利厚生や給与など制度や待遇が魅力的である」ことが重要な比較軸になっています。単に企業規模や知名度だけでなく、事業の継続性や収益基盤の安定、給与水準・福利厚生・昇給の見通しといった“将来の生活設計に直結する情報”が、意思決定を左右しやすい点が特徴です。

POINT③ワークライフバランス(「希望の勤務地に就ける可能性が高い」など)

Z世代の企業選びでは、仕事の内容や成長機会に加えて、「希望の勤務地に就ける可能性が高い」「労働時間や勤務スタイルに魅力がある」という観点が重要な判断軸になります。趣味・学び・友人や家族との時間を確保したいという意識が強い傾向にあります。また、長時間労働やメンタル不調が社会課題として扱われてきた背景もあり、無理なく働き続けられる環境かどうかは、入社判断だけでなく定着にも直結します。

POINT④企業の雰囲気・社風(「社員や社風が魅力的である」など)

Z世代にとって、「社員や社風が魅力的である」「企業理念やビジョンが魅力的である」という観点は、そこで働く自分を具体的に想像できるかを左右する重要な要素です。SNSを通じて日常の体験や感想を共有することが一般化しているため、表面的なメッセージよりも、現場のリアリティがにじむ情報(社員の言葉・空気感・意思決定のプロセス等)を重視しやすく、企業の“中の姿”を敏感に見極めます。
なお、株式会社リクルートマネジメントソリューションズの「2025年新卒採用 大学生の就職活動に関する調査」では、「内(々)定受諾の最終的な理由」として、仕事内容・社風・業績の安定性・勤務地・給与・待遇といった観点が高く示されており、本稿で整理した4つの観点とも整合します。

選ばれる企業になるための3つの施策

1.情報発信で差をつける!コミュニケーションのポイント

募集要項に記載された給与・福利厚生・残業時間・事業内容といった情報だけでは、求職者の決め手に欠ける傾向があります。企業側は事実に加え、働く現場のリアリティが伝わる情報を補完的に発信し、職場の雰囲気や人間関係、価値観といったソフトの面まで含めて魅力を発信することが重要です。
具体的には、採用動画やSNSを活用し、社員の声や日常の様子、仕事の進め方、チームの空気感などを、継続的に発信することが効果的です。実際、採用動画を視聴してソフト面の魅力が伝わったという声は少なくなく、株式会社moovyの「採用動画のアンケートデータから見る「Z世代に最適な採用手法」」では、採用動画に対する評価として「会社の雰囲気や社員の人柄がリアルに伝わった」が最多の回答となっています。
次に、コミュニケーションにおける2つのポイントを解説します。

①AISASモデルで採用広報を改善

採用活動では、学生の行動プロセスに沿った情報提供が重要です。考え方のヒントとなるのが、株式会社電通が提唱したデジタルマーケティングにおける購買行動モデル「AISAS(アイサス)」です。

まず、Attention(認知)の段階では、求人サイトや採用ページを通じて、まずは企業の存在を認知させることが重要です。
Interest(興味)の段階では、企業に興味を持ってもらうため、採用ページの内容やデザインに工夫が必要です。統一感のあるビジュアルと簡潔なメッセージはユーザーの関心を高め、次の行動へとつながりやすくなります。
Search(検索)の段階では、学生が企業を比較・検討するための“深掘り”情報の提供が鍵となります。具体的には、社員インタビューや1日の業務フロー、職場の雰囲気など、募集要項だけでは伝わらないソフト面を補完するコンテンツを用意します。
Action(行動)の段階では、説明会予約やカジュアル面談、エントリーフォームへの導線を明確にし、問い合わせのハードルを下げる工夫が必要です。
最後に、Share(共有)の段階では、応募者や内定者自身がその企業について共有したくなる仕組みづくりが重要です。近年では、内定者のSNSでの投稿を見たユーザーが応募に至るという流れも増えています。

②SNS・動画で“リアルな企業の雰囲気”を伝えるためのポイント

採用広報におけるSNS活用は、それぞれの特性を生かした情報発信が重要です。
X(旧:Twitter)は140文字以内の短文で即時性の高い発信が可能で、企業の現在を親しみやすく伝えることができます。Instagramは写真や短尺動画を通じてブランドの世界観を表現するのに適しており、コーポレートカラーを活用したテンプレートや製品写真、インタビュー抜粋などで視覚的に訴求できます。TikTokは10〜20代の利用率が高く、企業の雰囲気をカジュアルに短尺動画で伝えるのに最適であり、社員同士の自然な会話やオフィスの日常風景などが効果的です。YouTubeは長尺動画で情報量を確保でき、仕事の1日の流れや製品ができるまでの過程、若手と上司の対談、現場の舞台裏などを動画に用いて企業の実態を多角的に伝えることができます。

2.リファラル採用で広がる“信頼の輪”

リファラル採用(社員・内定者による知人紹介)は、求人広告では出会えない潜在的な候補者に届きやすく、かつ入社後のミスマッチを軽減します。学生にとっては、大勢向けの説明会では得られない“生の声”が得られ、企業の雰囲気を具体的にイメージしやすくなります。

3.制度改革で定着率アップ!未来志向の組織づくり

採用広報がいかに優れていても、学生が重視する働きやすさや成長機会が社内で担保されていなければ、選ばれ続ける企業にはなりません。制度と文化の両面から、中長期での整備が必要です。

①ワークライフバランスを再定義

ワークライフバランスは、単に私生活を優先することではありません。「やりがい・充実感を持ちながら働き、仕事の責任を果たしつつ、ライフステージに応じて多様な生き方を選択・実現できる状態」が本質です。現場マネジメントには、目標達成や人材育成に加え、個々の事情を踏まえた業務分担・調整がより一層求められます。

②DXによる働きやすさの実現

Z世代は効率性に敏感です。非効率な慣行を見直し、デジタル化(申請・承認の電子化、RPAでの定型業務削減、会議のペーパーレス化等)を進めることで、生産性を高めながら労働時間を削減する取り組みは、採用広報における強力なアピールポイントになります。

③キャリアの複線化と社内流動性

近年、若手人材のキャリア志向は変化しており、管理職として組織を率いる道を志向する層がいる一方で、マネジメントよりも専門性を磨き、プロフェッショナルとして価値を発揮したいと考える層も少なくありません。こうした傾向を踏まえると、企業には単線型の昇進モデルだけでなく、個々の志向に応じたキャリアの選択肢を示すことが求められます。このような学生のニーズに応えるためには従来の管理職としてのキャリアのみならず、プロフェッショナルコースなど複線型のキャリアの提示も重要です。社内公募や希望に基づく配置転換、副業制度、リモート・テレワークの推進等、多様な働き方を許容する枠組みの整備も効果的でしょう。個人の成長を制度面で後押しすることが、採用競争力と定着率の向上につながります。

④賃金体系の整合性と見直し

最低賃金の引き上げや新卒採用の活発化にともなう初任給の上昇への対応は不可避です。ただし初任給のみを引き上げると、既存社員と新入社員の賃金公平性に歪みが生じるおそれがあります。基本給レンジや昇給ルールの明確化、ベースアップの方針見直しなど、賃金体系の抜本設計への踏み込みが重要です。

“情報発信+制度改革”で採用を成功に導く!

Z世代は、さまざまなメディアを駆使し、募集要項以上の「職場のリアル」をオンラインで能動的に探し求める世代です。解禁時期に情報を出すだけでは不十分で、社風や実際の働き方など人の温度感が伝わる情報を鮮度高く継続的に発信することが肝要です。
同時に、中長期には組織風土や制度の整備も重要です。新卒採用の成否にとどまらず、既存社員の働きやすさ・エンゲージメント向上にも直結します。人的資本経営の考え方に照らせば、社内の広いポジションの公募制化、副業・兼業の推進、健康経営とWell-beingへの投資なども重要な論点です。
採用広報と内部制度の両輪の改革で、学生から“選ばれる企業”へと確かな歩みを進めていきましょう。

参考資料

執筆:浜銀総合研究所

このページをシェア

関連記事

経営課題カテゴリ

経営課題テーマ

不明点を問い合わせる

お問い合わせはこちら