人手不足も解消!経理DXで実現する中小企業の持続的成長
公開日:2025年5月22日

経営の指針に大きな影響を与える経理業務のDXは、社内の変革に不可欠です。昨今は使いやすい会計システムや経費精算システム、給与計算システムも多数あり、経理は比較的DXを実現しやすい部門です。
この記事では、中小企業が経理DXに取り組むメリットや、改善できる業務の例、推進する際のポイントをご紹介します。
経理DXが実現すること
「経理DX」とは、デジタル技術を活用した経理業務の変革を指します。業務の効率化・自動化を実現するとともに、データの集約や可視化による経営判断の迅速化などさまざまな課題を解決します。
中小企業の経理で改善できる課題の中から代表的なものを5つご紹介します。
1.人材不足の解消
神奈川県内の中小企業・小規模企業2,600社を対象にしたアンケート「令和5年度 神奈川県中小企業・小規模企業経営課題等把握事業結果」で、人材の確保が「あまりできていない」「まったくできていない」と回答した企業は合わせて51.9%を占めており、半数以上の企業が人材確保に課題を抱えています(設問有効回答数:688)。DXによって業務を自動化し、少ない人員で効率的に業務をおこなうことも解決策のひとつです。
![[人材の確保に関する充足感(N=688)]十分に確保できている 9.9%、おおむね確保できている 33.7%、あまりできていない 33.7%、まったくできていない 18.2%、その他 4.5%](/shared/images/hojin/column_article_1270306_12651_img_01.jpg)
2.法制度改正への対応
経理部門では法制度の改正に合わせた対応が求められます。最近では、「電子帳簿保存法」の改正や「インボイス制度」の導入によって、書類の管理がさらに煩雑になり、業務負担が増えたという企業も少なくないでしょう。
電子帳票システムを導入すれば、システム上で電子帳簿保存法に対応した帳票の管理が可能です。書式や記録方法の変更への柔軟な対応、入力漏れがあった際の自動アラート等で、法制度の改正にスムーズに対応できます。
3.経理業務の属人化の解消
経理は高い専門性が必要とされ、属人化しやすい領域の1つです。特に中小企業では、ごく少数の担当者が経理業務を支えているケースも少なくありません。業務が属人化すると、担当者の重荷となるうえ、休職や退職によって業務が立ち行かなくなる恐れもあります。
経理システムの活用で業務を標準化し、担当者が変わっても高い品質で業務を遂行できる環境の整備が重要です。
4.経営判断の迅速化
会計情報を分析し、経営の状態や課題を経営層に示すことも、経理の大切な仕事です。しかし、データが分散していると、分析のたびに必要なデータを集め直す手間が発生し、業務負担が大きくなります。また、入出金の処理や会計処理などの事務作業により、分析業務に時間を割けないことも少なくありません。
経理DXにより分析に必要なデータをすぐ集められるようになれば、事務の時間を削減し、経営判断を支える高度な分析や戦略的な提案に集中できるようになります。
5.コストの最適化
ペーパーレス化は、紙代・印刷代・郵送代等の経費を削減します。加えて業務の効率化を実現できれば、時間的コストや人的コストはもちろん、記入漏れといったヒューマンエラーも減らせます。
経理DXで効率化できる業務の事例
では、経理DXで改善できるのは、具体的にどのような業務でしょうか。ここでは、3つの業務をご紹介します。
1.請求書の発行・処理・管理
請求書発行システムを活用すると、請求書の作成から送付までがシステム上で完結します。郵送やファックス、控えのファイリングも不要です。さらに、インボイス制度や電子帳簿保存法に対応したシステムも多く、法令を遵守しながら効率的に管理できます。
2.受注や仕入れなどの集計
Excel管理は、担当者ごとのスキルの差や運用ルールの違いで、属人化しがちです。しかし、会計ソフトを導入すれば、担当者が誰であっても同じ手順で操作でき、統一された管理が可能です。仕入れや売り上げを自動で集計できるため、業務も効率化します。
3.経費精算
従来の経費精算では、紙の領収書を受け取り、手作業で処理する必要がありました。しかし、会計ソフトを導入すれば、申請者が直接システム上で必要な情報を入力できるため、経理担当者の負担を削減できます。電子帳簿保存法に対応したシステムであれば、領収書をデータのまま保存可能、申請から受理までの時間も短縮されます。
経理DX推進のポイント
実際に経理DXを進める際は、どのようなポイントに気を付ければ良いのでしょうか。最後に、特に意識したいポイントを3つご紹介します。
1.業務の棚卸しと優先度の整理
経理DX成功の第一歩は、現状の業務を正しく把握し、どこから改善に着手すべきか見極めることです。闇雲にデジタルツールを導入すると、かえって手間が増える可能性もあります。まずは業務の流れを洗い出しましょう。
たとえば、請求書の流れを追ってみます。どの企業から、どういった方法で請求書を月間何枚受け取っているか。データを仕訳するまでに誰が、どのような情報を、何の書類に入力しているか。業務を細かく整理すると、負担の大きい作業、非効率な作業が見えてきます。
次に、人が対応すべき部分とツールに任せる部分を分け、優先順位を決めます。特に中小企業ではペーパーレス化から取り組む企業が多く、紙でのやり取りをデジタル化するだけでも効果的です。
まずは小さな成功体験をつくり、横展開していきましょう。
2.システムに合わせた業務フローの変更
業務フローや社内ルールを導入するシステムに合わせて変更しましょう。
現金出納帳などをExcelで管理している場合、自社独自の集計項目が加わっている場合があります。こうした機能をそのままシステムに搭載するとなると、コストが嵩み、開発期間も長くなります。導入するシステムに合わせて業務を見直せば、コストを最小限に短期間でDXを実現できます。既存の業務フローやルールを改善するきっかけとしても活用ください。
3.最適な伴走者
自社に合ったシステムの選定や導入に不安がある場合や社内にデジタル人材がいない場合は、伴走してくれる外部パートナーを見つけましょう。
神奈川県内では、神奈川産業振興センターがDX支援アドバイザーの無料派遣をおこなっています。DX支援サービスを提供している金融機関もあるので、まずは相談してみるのも1つの手です。
経理DXで社内のDXをリードしよう
人材不足や法改正への対応が求められる昨今、経理DXは中小企業にとっても喫緊の課題です。しかし、ただ会計ソフトを導入するだけで実現できるものではありません。何を実現したいかを明確にし、業務フローの見直しを含めた中長期的な取り組みが必要です。
経理部門には、企業全体のデータが集まります。経理DXによってデータを集約・活用すれば、他部門との連携がスムーズになり、全社の生産性向上につながります。
経理を起点に全社DXを推進し、持続的な企業成長の礎を築きましょう。
関連記事
経営課題カテゴリ
経営課題テーマ
不明点を問い合わせる