DXは中小企業にとって急務!経営者が知っておきたい成功のポイント

公開日:2025年5月22日

市場の変化に柔軟に対応し、顧客の期待を超える価値を提供するには、中小企業にもDXが欠かせません。しかし、中小企業基盤整備機が実施した「中小企業のDX推進に関する調査(2024年)」によると、「DXに取り組んでいる」「取り組む予定がある」と回答した中小企業は42%と半数に至りません。

一方、DXのメリットは「手作業や紙ベースの業務の自動化による生産性の向上」「データの一元管理によるデータ分析や経営判断の迅速化」など多岐にわたります。本記事では、DXを成功に導くために中小企業の経営者が知っておきたいポイントをご紹介します。

DXの概要とその現状

そもそもDXとは、何を指すのでしょうか。神奈川県内の企業の取り組みとあわせて説明します。

DXとは

DXは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略で、「企業がデータやデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革し、競争上の優位性を確立すること」を意味します。変革の対象は、製品やサービスだけでなく、業務そのものや組織、企業文化も含みます。

神奈川県内の企業のDX推進の現状

では、神奈川県内の中小企業のDXはどの程度進んでいるのでしょうか。

県内の中小企業・小規模企業2,600社を対象にしたアンケート「令和5年度神奈川県中小企業・小規模企業経営課題等把握事業結果」では、DX推進のためにおこなっている又はおこなう予定の取り組みを聞いています(複数回答可)。「ペーパーレス化」と回答した企業は約4割、「業務におけるオンラインの活用」が約3割と、一部の中小企業は既にDXに取り組み始めています。一方で、約2割の企業は「取り組む予定はない」と回答し、差が浮き彫りとなっています。

[DX推進のためにおこなっている又はおこなう予定の取り組み(複数回答可)]組織再編 2.5%、デジタル活用の視点からの業務プロセスの見直し 18.0%、ワークフローや在庫管理等のデジタル化 12.7%、Web広告やオンラインプラットフォームによる販売路線の多角化 9.1%、定型業務の自動化(RPA)、5.6%、業務におけるオンラインの活用 29.0%、ペーパーレス化 39.2%、ハンコの撤廃・電子契約の導入 12.2%、業務システムのクラウド化 18.6%、取り組む予定はない 23.4%、その他 2.5%
「令和5年度神奈川県中小企業・小規模企業経営課題等把握事業結果」p.17より引用

DXが中小企業にもたらすメリット

そもそもDXにはどのようなメリットがあるのでしょうか。おもなメリットを2つご紹介します。

業務効率化による従業員の生産性の向上

1つ目のメリットは、業務フローの効率化による生産性の向上です。

先のアンケートで最も高い数値を示した「ペーパーレス化」もその鍵を握ります。たとえば、クラウドストレージを活用し紙ベースの資料をデジタル化すると、印刷や保管の手間が削減され、複数名の同時編集が可能になります。

加えてRPA(Robotic Process Automation)と呼ばれる、PC上の単純な繰り返し作業や定型処理を自動化するソフトウェアは、人が対応していたデータ入力や集計などの定型作業をより速く正確に処理します。

結果、従業員は戦略立案や顧客とのコミュニケーション強化等のより重要な業務に集中でき、企業全体の生産性、競争力強化につながります。

経営判断の迅速化

2つ目のメリットは、経営判断の迅速化です。DXにより業務プロセスをデジタル化すると各種記録がデータで保存されます。それらを集約し一元管理することで、必要なデータに素早くアクセスできるだけでなく、データの一貫性や信頼性が向上します。

データ集約が進めば市場や顧客動向の詳細な分析や、経営判断の迅速化を実現します。さらにAI分析ツールも掛け合わせると、AIによる購買や行動履歴に基づく需要予測分析等も可能です。

DXを成功させるための鍵

では、中小企業のDXを成功させるには、どのような流れを意識すれば良いのでしょうか?

DXを進める際は、以下のようなプロセスを経ることが一般的です。

  1. 1.
    現状の課題を把握する
  2. 2.
    理想の状態を定め、DXの戦略を策定する
  3. 3.
    戦略に基づき、業務フローを見直し、適切なデジタルツールを選定・導入する
  4. 4.
    DXの効果を定期的に評価し、改善を繰り返しおこなう
  5. 5.
    DX文化を組織に根付かせる

それぞれのプロセスをご紹介します。

1.現状の課題を把握する

DXを始めるには、まず「自社のどこに課題があるのか」を明確にする必要があります。たとえば、以下のような問題はありませんか。

これらの課題を見つけるには、経営者だけでなく、現場スタッフや管理者からも意見を聞くことが重要です。売上データや業務の進捗管理表など、具体的な数値をもとに現状を分析することが、課題を正確に把握するためのポイントです。

2.理想の状態を定め、DX戦略を策定する

課題が明らかになったら、「理想の状態」を定義します。「受注処理時間を50%短縮する」「リピート率を10%向上させる」など、具体的な目標を設定しましょう。そのうえで、課題解決のための中長期的な戦略を立てます。戦略を実行するためには、推進チームの編成や責任者の設定も必要です。

3.業務を見直し、適切なデジタルツールを導入する

次のステップは、業務の効率化に向けたフローの見直しと適切なデジタルツールの導入です。現行の業務フローを「見える化」して無駄を排除したうえで、自社に合ったツールを選びます。導入後の社員トレーニングや運用サポートも忘れずにおこないましょう。国や自治体から補助金が用意されている場合もあるので、積極的に活用を検討してください。

デジタルツールの例 [ペーパーレス化]オンラインクラウドストレージ、電子署名ツール、ナレッジ共有ツール [ワークフローや在庫管理などのデジタル化]在庫管理ツール、EC管理ツール、顧客関係管理(CRM)、マーケティングオートメーション [経営判断の迅速化]データ統合管理ツール、データ解析・BIツール、AI機械学習ツール

4.効果を測定し、繰り返しおこなう

ツールや新しいフローの導入後は、定期的に効果を測定します。KPI(重要業績評価指標)を定め、成果を数値で把握することが重要です。たとえば「受注処理時間が短縮されたが、在庫管理に新たな課題が出た」場合は、改めて業務フローを見直し、改善しましょう。

5.DX文化を組織に根付かせる

DXの推進には社内の理解も重要です。説明会やワークショップを開いてDXの必要性を説明し、実施への理解を得るようにしましょう。同時に現場が抱える課題のヒアリングも忘れてはいけません。社員から意見が挙がった場合は、積極的に採用し現場の実態に合わせて調整しましょう。現場任せにせず、方向性・目的を社内に示し、積極的に対話する姿勢を見せることが重要です。

自社に適したDXで競争優位性を高める

社会や市場が急速に変化し、新しいサービスや商品が続々と生まれています。中小企業が成長を続けるためには、市場の変化に柔軟に対応し競争力を高め続けなければいけません。その成功にはDXが欠かせません。

デジタル技術は日夜進歩しており、適切なツールの選定や効果的な利活用に専門的な知識が必要となる場面も少なくありません。社内にデジタル人材がいない場合は、DX専門家派遣サービスなども活用し、スキルやノウハウの不足を補い、スムーズな導入と運用を実現しましょう。

神奈川産業振興センターでは、DX支援アドバイザーを無料で派遣しています。地場のことをよく知る地域の金融機関も、DX支援のサービスを提供している場合があります。こうしたサービスも活用しながら、自社に適したDXを進めていきましょう。

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