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あなたのそばで、夢みる数字

大友啓史さんロングインタビュー 夢みる数字vol.10「日本の心」篇

ロングインタビュー
映画監督
大友啓史さん
NHKドラマ『龍馬伝』『白洲次郎』をはじめ、さまざまな話題作を世に送り出してきた大友監督。今回のテーマである日本の心について語ってくださいました!

小学生の頃の夢を教えてください。

低学年のときは野球選手。高学年のときは新聞記者。学級新聞作るのが好きだったんです。ガリ版刷りだったんですけど、ガリガリやる感じが好きだったんですよね。レイアウトも自分で考えたり。朝日新聞とかのタイトルの背後の模様とかあるでしょ?そういうのを研究したりしてましたね。何かを自分で作りだして、それを見て喜んでもらうのが好きだったんですね。

今のお仕事につながる点はあるのでしょうか。

野球って個人プレーだけど、チームプレーでもある。新聞も、取材対象があって、取材して記事を書く人、印刷する人、届ける人が、皆つながっている。映画も、それぞれの能力を持つ人が集まってきて、ひとつのものを作り上げていくチームプレーですから、野球や新聞と共通しますね。映画は、エキストラの人たちもあわせると、200人、300人の壮大なチームプレー。みんなで力を合わせないと良い作品はできない。今は、チームプレーの幅が大きくなってきたってことかもしれないですね。

映画監督は、チームのリーダーですね。

僕は、「仕事は楽しくないと」って思ってます。やっぱり撮影って、良い事ばっかりじゃないんで、思いどおりになることなんて、めったにないんですよ。晴天で撮りたいからって、そんなうまく天気を待って撮れるってわけじゃない。でもその度にイライラしたり、思いどおりにいかないと思ってても、ひとつもいいことないんです。雨だったら雨なりに撮ることが要求されるし、むしろ、それに応じて柔軟にやっていったほうが、神様が味方してくれるってことが10何年この仕事を続けてきてわかったんです。だからね、チームとして楽しくやることは大事にしてます。楽しくやるっていうのは、ラクにやろうよってことじゃなくて、そこにいる皆がプロとしての意識をちゃんと持って最も良いものをつくりだそうと自発的に動くってこと。そうすれば、自然に現場はいい方向に向いていく。リーダーとしてはその空気を保ちつつ、次のための手も考える。そういうところは大事にしてますね。

映像との出会いはいつ頃でしたか?

高校の文化祭かな。
野球をね、膝に水が溜まっちゃってできなくなった。それで、高校ではやることがなくて。
それまでかっこいいと思っていた青春の一生懸命さを、イケてないと思い始めたり、気恥ずかしくなってきたり、素直にそこに入って行けなくなったんですね。たぶん、あれは思春期。心と身体が分裂していく、バランスがよくない時期だったんだと思いますね。
その頃に文化祭で短編映画を作って。ここでは言えないような禁断の初監督作品です(笑)

歴史上の人物を深く掘り下げていったりされていく中で、大友さんが感じられている日本人らしさってありますか?

僕はね、日本人って本当に、やせがまんだと思っているんですよ。規律を自分で作ることで、何かを生んできた文化だと思うんですよね。サムライは象徴的。わざわざ徳目みたいなものを自分たちで作って、破っちゃいけないっ!て自分を律する。
ハラの中に黒いことなど何もないってことを証明するために腹を切ってみせる。これはもう、度を超えたやせがまんですけどね…

その日本人のやせがまんの部分が、震災によって見えてきたりもしましたね。

被災地の人たちは、自分たちが一番しんどいのに、それを口に出さなかったり、他の人のことを考えたり、いたわったりする。でも、そういう姿を他の国の人が美しいと思ったりするわけですよ。東北人たちが見せてくれたのは、そういう日本人「らしさ」だと思います。

目に見えないものが受け継がれている…

「武士は喰わねど高楊枝」って、やっぱりそこに戻る。日本人の倫理観は、武士の時代に作られたんじゃないかな、と感じますね。武士は士農工商でいえば特権階級だけど「自分たちは食うものを支えてもらっている。世の中に対して貢献しなければ」という志が熱を持ち、大きなうねりとなって幕末の改革につながった。その土壌が今も豊かに息づいている気がしますね。

大友監督にとってのヒーロー像はありますか?

僕、本当はヒーローって世の中にいないんじゃないかと思うんですよね。みんな生身の人間ですから、生きていると当たり前に手を汚すこともあるわけじゃないですか。普通に人が暮らしていくっていうのは。だから、清廉潔白なヒーローっていうのは現代にはいないと思っていて。結果としてヒーローと呼ばれる人っていうのは、何かを犠牲にして何かを成し遂げてたりするわけだから、決して、道徳的に正しいばかりではないと思うんですよ。
だから何がヒーローかっていうのは個人的にはわからなくて、善も悪も飲み込んだような人が、僕は面白い。 のっぺりとした道徳的に正しい、っていうだけではつまらない。ドラマ的に魅力的な人が、僕にとってはヒーローということになる。
たとえば、坂本龍馬は、現代で言えばフィクサー。裏で走り回ってた調整役なんですよね。そういう龍馬がヒーローになる日本っていうのは、やっぱり独特のヒーロー文化があると思いますね。

作品を通じて、そういう人物から影響を受けるっていうことはありますか?

あります。だって、脱藩しちゃったもん、俺(笑)。ひとりの人物を取り上げるっていうことは、その人物の目線でものを見るってことなんですよ。
その人の人生を追体験していくので、価値観をどこかで共有してしまう。龍馬は日本を変えようとした革命家。
なら、龍馬を描く僕たちも革命家じゃないとまずいんじゃないの?と。それでカメラから撮り方からすべてを変えて、龍馬と一緒に走っていくようなことを、その都度やっていく。だから、終わったとき「これは脱藩するしかない」と会社を辞めてフリーになった(笑)。次に行かなきゃ、次に行かなきゃ、という感じになってくるんですよね。

今後の動きが注目されている大友監督。これからの夢について教えてください。

僕は、違うことをやっていくのが好き。とにかく、同じことをやりたくないんです。先日、NHKを辞めてフリーになって、制作も新しいチームでやっているんですが、やっぱり鮮度がありますよね。これから、あらゆるジャンルをやってみたい。
「あの人、なんだかわからないくらい色んなことやってるよね」というぐらいバラエティのある仕事をしたいですね。そして、僕は盛岡出身です。僕なりのやり方で支援ができればと、いま、被災地から情報発信する準備を進めています。
僕の本業はエンタテイメントですから、それを軸にして。岩手には面白い人たちがたくさんいるんで、その人たちの魅力を僕の演出をとおしてプレゼンテーションしたいと思ってます。

若い世代が夢を見つけるヒント、教えてください。

僕の場合、映画は好きだったけど、映画を作りたかったわけじゃないんですね。その都度、一生懸命やってきた中で、まわりの人が助けてくれたり、成り行きでなってるやってきたことがつながってる。大切なのは、自分のやりたいことと、自分に向いていることは、もしかしたら違うかもしれない、ということに早く気づくことのような気がしてるんです。
夢って、持つのはいいけど、プロセスの中で自然に見つかることもあるので、僕は焦って、夢、夢って言わなくてもいい気がする。

夢を抱きにくい時代ともいわれていますが…

いまの子どもに夢がないとしたら、逆に言うと、こっちのせいかもしれないよね。夢を与えるのは、逆に大人の側だからね。
僕はむしろ子どもたちに「そんな大人の姿を見せられてたら、夢なんか持てないよ」って言ってやれ!って言いたい。それと、やれることを一生懸命やっていたら、夢なんて向こうから寄ってくる。やっぱり、何事も10年はかかるって、日本人は言ってきたじゃないですか。手に職つくまで。本当だと思うよ。3年くらいじゃつかない。自分もね、30歳までに演出で食えるように、と思っていたけれど、全然足りなかった。それから走ってるうちに、仕事の仕方を覚えて、人とのつきあい方を覚えて、10年はかかると思うんで、何かこれがやりたい!と思ったら、辛抱して打ち込んでみるというのは、大事だと思いますね。そうしないと、血肉にならないものね。そこで傷ついたり、悔しいと思わないと頑張れないよね。

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