ツヅク、ツナゲル プロジェクト - 矢作紋乃丞(プロサーファー)

プロサーファー 矢作紋乃丞 MONNOJO YAHAGI

MONNOJO YAHAGI プロサーファー 矢作紋乃丞 はまペン

自然が生み出す波の上に乗り、
その技術や独創性の高さ、技の美しさなどを
多角的に評価し勝敗を決める『サーフィン』。

4歳の頃から神奈川の鵠沼海岸を拠点に、
世界中で活躍するプロサーファー矢作紋乃丞。
波のように穏やかで力強い矢作選手が、
サーフィンを続ける理由に迫ります。

Challenging Story

Episode.1 挑戦し続ける理由 別ウィンドウが開きます

Episode.1 挑戦し続ける理由

Episode.2 Coming Soon

Interview

フルバージョン掲載中

Story 01 何よりも好きだった
『サーフィン』

矢作紋乃丞

サーフィンをはじめたきっかけは?

家の近くに海があって、お父さんがサーフィンをやっていたんですけど、4歳の頃に海に連れてってもらって、お父さんとか、地元の人がサーフィンしているのを見て楽しそうだなって思ってはじめました。

一番最初に自分で波の上に立てた時の思い出は結構覚えていて、5歳とか6歳くらいだと思います。めっちゃうれしい、たのしいっていう感じでしたね。

本当に自分が好きだなって思ったら、ずっとやっている性格だったので、試合に負けた後とか1日で15時間、海の中に入り続けていた時もありました。納得できるまで続けちゃうので、周りの人はちょっと大変だったかと思います(笑)。

小学校に入る前からもう毎日のように海に行っていたんで、学校終わったらすぐ走って帰って海に行ってました。サーフボードには自転車よりも乗ってましたからね。子どもの頃からずっと一番、優先度が高かったのが、サーフィンです。

Story 02 「勝つため」ではなく
「うまくなるため」

矢作紋乃丞

はじめて試合に出たのはいつ頃ですか? そして趣味から「選手」として自覚が芽生えた瞬間は?

そうですね、はじめて試合に出たのはたぶん6歳くらいだったと思います。最初の試合は親子で出られる大会で、お父さんに「出たい!」って言って出してもらいました。

選手としての自覚で言うと「全日本サーフィン選手権大会」というアマチュアで一番大きな大会があるんですけど、小学5年生か6年生の時に出場して結構ひどい負け方をして、その時にすごく悔しくて⋯。それまでは負けるとちょっと悔しいけど「まぁいいや」って思ったりしたんですけど、その試合に負けたのがすごく悔しくて⋯そのあたりから「試合に勝ちたい」と思うようになって、その時が「選手としての自覚」が芽生えた瞬間だと思います。

試合に勝つために練習しているというか、サーフィンがうまくなりたくて練習しているので、勝てばいいというわけでもなくて、それよりは「すごいサーフィン」をして勝ちたいので、うまくなるのを目標に練習しています。トップの人たちのサーフィンって決まったことをやるんじゃなくて、波に合わせて一番かっこいい技をやるんですよ。その人のスタイルだったりとか、魅せるライディングだったりとか。できるようにがんばりたいです。

ただ、海って毎日波のコンディションが変わるので、自分が技を練習したいと思ってもその波が来るわけではないんですよ。その時に練習したい波が来ないと練習ができないので、いつも海を見てその時にできる技を考えたり、技ができなくても、たくさん波に乗るとか、いい波を選んで乗るとか、その時の状況に応じて練習しています。

Story 03 同じ場所でも
同じ波は、来ない

矢作紋乃丞

矢作選手にとってのサーフィンの魅力とは?

サーフィンって「波」に乗るじゃないですか。波に乗る時のスピード感や爽快感ってサーフィンでしか体感できないんですよ。他のスポーツもいろいろやってみたんですけど、サーフィンが楽しいなって。同じビーチでもちょっと移動するだけで違う波に乗れるし、海外に行くともっと違う波で、なんならもう別の競技なんじゃないかってくらい違う波でサーフィンができたりするんですけど、その度に毎回新しい経験ができるんで、やっていて全然飽きないですね。鵠沼で乗っているボードがハワイで調子良いかと言われたらまた違って、ハワイでよかったボードが鵠沼に合うかというとまたそれも違うんですよね。潮とか地形とか、風とかでも変わるので、その場所に合ったボードとか乗り方を探すのもサーフィンの楽しみの一つですね。

Story 04 勝利の秘訣は
「勝ちたい」よりも「楽しむ」

矢作紋乃丞

©World Surf League

印象に残っている試合はありますか?

インドネシアのニアスというところで20歳以下の試合があって、それに勝てば世界選手権に出られるという試合の決勝だったんですけど、対戦相手がその前の年の20歳以下の世界選手権で優勝したオーストラリアの選手を含む4人の*ヒートで。

*2〜5人が対戦する試合の組み合わせのこと。制限時間の2〜30分の間に海へ出て、決められた順序で10本程度の波に乗り、その間の点数の高い2本の合計点で順位を争う。

みんなが高い点数を出す中で、僕だけ低くて、波もなかなかいいのが来なくて⋯。だからこの試合は優勝を狙うというよりも、せっかくのいい海で、すごい選手と試合ができるんだから、自分ができることをやって「楽しもう」と思って、自分のやりたいサーフィンのスタイルで挑んだら、結果的に高い点数を2本出せて逆転優勝できたので、印象に残っています。

勝ちたいっていうメンタルは大事だと思うんですけど、勝つことばかり考えていると対戦相手のことばかり気になってしまうので、楽しみながら自分らしいサーフィンをするというメンタルに切り替えてからは、最近勝てているので、この気持ちは大事にしたいと思っています。

矢作紋乃丞

Story 05 1年というブランクを
乗り越えて

矢作紋乃丞

サーフィンをやっていて怖かったことはありますか?

めちゃくちゃありますね。大きい波の時とか、潮の流れが強い時とか。本当に直感的に「今日死ぬな⋯」と思ったら入らないですし、大きな波が来るたびに「どうしようかな⋯」と思うんですけど、でもまぁそれを乗りこなして技を決められたらどうなるんだろうって思ってワクワクしたら入っちゃいますね。もちろんできない時の方が多いんですけど、それでできた時はすごいうれしいですね。

骨折はもう7、8回してて、その中で一番大きかったのがスネの複雑骨折で、サーフィンがもう1度できるようになるために1年くらいかかったんですよね。サーフィンがまたできるようになるのか結構不安で、サーフィンの映像やSNSも見れないくらい気持ちも落ち込んでいたんですけど、リハビリの先生とかも一緒に手伝ってくれてだんだん足が動くようになってきて、「またできるかも」と気持ちを切り替えました。怪我したばかりの時はまたサーフィンができるなんて思ってなかったので、いま、こうやってサーフィンができてるのはハッピーです。

Story 06 見たい景色がある

矢作紋乃丞

矢作選手がサーフィンを「ツヅケル」理由とは

落ち込んでいる時とか、悲しい時でも、サーフィンをやっていれば忘れられたり、波に乗っている時が一番楽しいと感じられるし安心できるんで、続けて来れたっていうのもありますし、あとやっぱりうまくなるためにやっているんで、レベルの高い選手たちの姿を見て、ああいう技ができたら本当に楽しいだろうなって思うし、あの人たちが見ている景色を自分も見たいと思えるから毎日がんばって続けているんだと思います。あの海は絶対に行ってみたいとか、あの波に乗ったらどんな景色なんだろうって、すごい思いますね。

それと、2028年のロスでメダルを取りたいのと、「WSL」という団体の一番グレードが高い「WCT」というイベントでトップになることが今後の目標です。

試合以外だとサーファーの伊東李安琉(いとうりある)選手と都築虹帆(つづきななほ)選手と僕の3人でチームを作っているんですけど、その3人で、みんなが行きたいところに行って、素晴らしい映像を作りたいなと思っています。どこまでヤバい映像が作れるか⋯挑戦したいです。

Story 07 応援があるから続けられる

矢作紋乃丞

挑戦する人へメッセージを

やっぱり続けることってすごい大事で、好きなのに辞めちゃったり、諦めてしまう人っていっぱいいると思うんですけど、僕もこうしてサーフィンをやってきて、いろいろな怪我もして「もう無理かもしれない」って何回も思ったんですけど、諦めずに続けてきたことで、いま、だんだんといい結果も残せてきているんで、「なんとかなる」と思うんですよね。好きならずっと続けてほしいなって思います。

あとは小さい頃からずっとこの湘南に住んでいて、本当に小さかった頃からずっと応援してくれる家族だったり友だちとか、スポンサーとか、いろんな人に一番になるために応援してもらっているので、その人たちのためにも世界の舞台でかっこいいサーフィンを魅せられたらなって思います。

PHOTO GALLERY

  • インタビュー内容は2024年6月の取材に基づいています。記事内容および所属は取材当時のものです。
  • 取材は、新型コロナウイルス感染症対策を徹底したうえでおこなっています。

Profile

プロサーファー矢作紋乃丞(21)

2003年、神奈川県生まれ。日本におけるサーフィンの聖地とも言われる鵠沼海岸で4歳からサーフィンをはじめる。2023年には国内外の2つのタイトルで優勝。現在世界大会に向けた注目の若手トップとして活躍が期待されるプロサーファー。

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