はまぎんパートナーズ・ストーリー02 – JAS株式会社

社員はもちろん、
地域の方々や
世界
中の人から信頼
される
企業で
あり続けたい。

トラックや産業車両向けのシート(座席)の開発・設計・生産を
一貫して手掛けるJAS株式会社(横浜市戸塚区)は、
横浜で60年以上続く老舗の自動車部品メーカーです。
自動車業界を取り巻く環境や経営体制の変化
などを経て社長となった松岡力氏には、
共に苦難を乗り越えてきた仲間や
地域の方々への想いがありました。

今回のソリューション「MBO(経営陣が参加する買収)を利用した事業承継」を見る

「横浜で60年。自動車に欠かせない部品の専門メーカーとして」

どのような事業をおこなっている会社なのか、お聞かせください。

松岡社長 もともと私どもの会社は、航空機の部品を製造する町工場として、岡山県の倉敷市で産声を上げました。戦後の一時期は、岡山県の地場産業である学生服の「金ボタン」を製造する会社として、トップシェアを誇っていたこともあります。そののちに国内の自動車産業が本格的に発展しつつある状況を踏まえ自動車の部品メーカーとして歩む道を選び、町工場から株式会社に組織変更して、企業として新たなスタートを切りました。
現在の場所に横浜工場が設立されたのは、1965年のことです。関東地区にある自動車メーカーに納入するトラック用シートを生産する拠点工場として、操業を開始しました。今は周囲に住宅がたくさん建ち並んでいますが、当時のこの一帯は、山を切り開いた中に工業団地が広がっていたと聞いています。以来60年近くにわたって、この地で一貫してトラックや産業車両向けのシート(座席)を作り続けています。
私は1985年に岡山の本社に入社して、ずっと開発畑で製品開発に携わってきました。そのあと北米にある関連会社に出向して生産管理や品質保証などをやっておりましたが、2004年に帰国して横浜事業所に赴任し、現在に至っています。

JAS株式会社 松岡 力社長イメージ

代表取締役社長

松岡 力 (まつおか ちから)

1985年、旧・難波プレス工業株式会社(岡山県倉敷市)に入社。2002年、北米インティア オートモーティブ社との合弁会社ブルーミントン・ノーマル・シーティング社(BSC)に出向。2004年に帰国後、横浜事業所の技術長に就任。副所長、執行役員を経て、2018年7月より現職。

「社内外の環境が激変する中で、横浜銀行
さんとのお取り引きが始まりました」

2018年にPE(プライベート・エクイティ)ファンドが経営に参画しました。その背景についてお聞かせください。

松岡社長 当時は地球温暖化対応としてエコカーに向かう「電動化技術」と、クルマの宿命的課題である安全対応、つまりは自動運転への「知能化技術」等の技術革新により、生き残りを目的として、自動車メーカーの間では合従連衡が一気に進んでいました。弊社の受注環境も多大な影響を受け、その中で本社は2017年に乗用車用シート事業からの撤退を決断しました。しかしトラック用シート事業をおこなっている横浜事業所は分社化されて、「NPW横浜」に社名変更して存続し、単独運営をすることになったのです。 JAS株式会社 社内イメージ さらにその翌年、創業家が会社の経営権をPEファンドに売却。そこで私が新たに社長に任命されたというような経緯があります。 JAS株式会社 社内イメージ その当時の社内は、どんな様子だったのでしょうか。 松岡社長 振り返ってみても、「あのときは本当に大変だった」という想いしか湧いてこないですね。まず会社分割されたとき。なにしろそれまで本社機能は岡山でしたから、日々の経理業務や生産管理業務、また開発した製品の評価試験など、そういったことができる体制が横浜事業所には一切なかったわけです。人材を集め、研究・開発設備などを導入し、その体制を一から作り上げるのは、本当に骨の折れる作業でした。 横浜銀行と取り引きが始まったのはいつですか。 松岡社長 2019年からです。先ほども言いましたが、もともと本社は岡山でしたので、ずっと岡山の地元の銀行との取り引きが続いていたのです。横浜で事業を始めてずいぶん時間が経ってから、ようやくお付き合いしたということになりますね。従業員の給与口座を開設するところから始まりましたが、当時の設備投資などの際にも相談に乗っていただきました。

「大切な仲間たちとお客さまを守るため、
経営陣による買収を決断」

今年の1月に、PEファンドからの株式の取得が完了しました。
そこで横浜銀行はどのような役割を担っていたのでしょうか。

松岡社長 横浜銀行さんには、今回M&Aアドバイザーという形でPEファンドとの交渉をサポートしていただきました。もちろん、横浜銀行さんを全面的に信頼していたからこそです。
それまでのお付き合いの中で、あるとき会社の建物の耐震対策を検討しなければいけないということがありました。その際、信頼できる地場の業者さんをご紹介いただいて、見積もりをとりました。そういった対応をものすごく的確に、スピーディーにやっていただいたんですね。ですので、何か困ったことがあったら横浜銀行さんに相談すれば大丈夫だというイメージが、私の中ですっかりでき上がっておりました。
MBO(経営陣が参加する買収)という手段を選択した理由は、なんでしょうか。 松岡社長 PEファンドが弊社に投資していた資金を回収してイグジットする意向があると知ったときに、「他社に株式を譲渡されては困る。われわれがすべて買い取りたい」と手を挙げたのですが、これには理由があります。
株式が譲渡されて他社の傘下に入った場合、そのグループ内の事業所と統合されるか、もしくは土地代も人件費も安い別の場所へ移転される可能性が非常に高くなります。 JAS株式会社 社内イメージ そうなった場合は、従業員の雇用が守れなくなるわけです。事業の撤退や会社分割などさまざまな困難を乗り越えて一緒に頑張ってきた仲間を、そのような憂き目にあわせるわけにはいきません。さらには別の場所に移転することで、お客さまにご迷惑をかけたり、信頼を損ねたりする可能性もあります。なんとしてでもこの場所で、社員たちと事業を継続したい。そう考えたことが、MBOを選択した一番の理由でした。 JAS株式会社 社内イメージ 実はPEファンドからは、ファンド側と取り引きのある別の銀行をアドバイザーとして紹介されていたんです。でも、どうもしっくりこなかった。その一方で横浜銀行さんは、私や経営陣の想いを汲んでくれて、親身なアドバイスと手厚いサポートをしていただきました。そこは非常にありがたかったというのが実感ですね。

「信頼と挑戦をモットーに、地元にも世界にも愛される企業になる」

今後の事業展開についてはどうお考えですか。

松岡社長 2021年に、NPW横浜からJAS(Japan Automotive Seating)株式会社に社名変更しました。名刺に印刷されている「JAS」のロゴを見て、何か気がつきませんか?「J」が車のシートの形、「S」がシートの揺れを軽減するサスペンションの形になっているんです。 JAS株式会社 社内イメージ 今後は国内事業を堅持しつつ、積極的に海外で事業を展開していきたいと考えておりますので、海外の方も社名を見て事業内容がすぐに理解でき、それと同時に社員も常に海外を視野に入れて欲しいという想いで、この社名にしました。 JAS株式会社 社内イメージ 現在、海外で注目している地域はありますか。 松岡社長 やはりこれから急速に発展していくのは、インドやインドネシアでしょう。インドについては、現地のメーカーと6年前に技術援助契約を結んで、すでに製品の生産が始まっています。インドネシアについても、今年の5月に技術援助契約を結び、これから弊社主導で製品の生産を立ち上げていくというような状況です。
特に弊社が手掛けるサスペンションは、非常に高い技術が結集した製品です。そのため世界的な部品メーカーをはじめ、海外から頻繁にオファーをいただいています。技術支援の要請も絶えませんので、安定した経営基盤のもとで、これからどんどん海外に事業を広げていきたいと考えています。
海外に目を向ける一方で、地元とのつながりも大切にされていらっしゃいますね。
そこにはどのような想いがあるのでしょうか。
松岡社長 もう10年くらいになるでしょうか。地元の小学校からの要請で、工場見学を受け入れています。弊社はトラックのシート以外に新幹線の運転席も製造しているのですが、それを見ると、子どもたちの目がキラキラ輝くんですよ。展示してあるシートに自分も自分もと座りたがるのが、すごく微笑ましい。そして見学が終わると、子どもたちから感想やイラストが書いてある手紙がどっさり届くんです。それを会社の食堂に貼り出して、社員みんなで眺めたり。とてもやりがいを感じる瞬間です。
今から約80年前に会社を立ち上げた創業者は、岡山の地場産業に非常に貢献された方です。私も創業者にはおよばないまでも、社員はもちろん地域の皆さまにも信頼され、地元の発展に貢献できる企業にしていきたいと考えています。そのために今後も、横浜銀行さんからさまざまなアドバイスをいただきながら、挑戦を恐れず、世界中のお客さまからのニーズに応えられる高品質な製品の開発・生産を続けてまいります。

※インタビュー内容は2024年9月の取材に基づいています。記事内容および所属は取材当時のものです。

今回のソリューションMBO(経営陣が参加する買収)を利用
した事業承継

MBO(経営陣が参加する買収)を利用した事業承継

解説 MBOを検討していた社長に対し、横浜銀行戸塚支店、横浜銀行ソリューション営業部、横浜キャピタル(横浜銀行グループの投資専門子会社)が、グループ一体となって事業承継とお客さまのさらなる成長に向けたソリューションを提供しました。横浜銀行は社長側のM&AアドバイザーとしてPEファンドとの交渉をサポート。また、通常のローンのほか、横浜キャピタルが運営しているYokohama Nextファンドから劣後ローンによる実質的な資本増強も含めた銀行グループとしての資金協力をおこないました。
MBO(マネジメント・バイアウト)おもに企業の経営陣が外部の投資家や金融機関から資金を調達し、自社の株式を買い取ることで、経営権を取得することを指します。 おもに企業の経営陣が外部の投資家や金融機関から資金を調達し、自社の株式を買い取ることで、経営権を取得することを指します。 PEファンド 未上場の株式等への投資をおこなうファンド。 SPC 事業承継のために設立した会社。 劣後ローン 資本に近い性質を持つ借入。

企業情報

会社名
JAS株式会社
代表者
代表取締役社長 松岡 力
所在地
横浜市戸塚区上矢部町926番地
創業
1942年
事業内容
トラック向け/産業車両向け
シートの開発・設計・生産

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