はまぎんパートナーズ・ストーリー05 – 株式会社ハリマビステム
「全ての人に『ハリマで良かった!』
を届けたい」
どのような事業をおこなっている会社なのか、お聞かせください。
当社は特定の企業グループに属さない独立系という立場を活かし、官公庁、民間デベロッパー、REIT、一般事業法人といった幅広い顧客層に対して清掃、設備保守、警備など品質の高いサービス提供が可能です。そうした多様な施設運営ノウハウとバランスの取れた顧客基盤とコスト競争力こそが、ハリマビステムの強みの源泉だと考えています。
2024年には、現中期経営計画の完了を見据えた10年先の長期ビジョンを策定しました。そのビジョンを社員と共有し、より身近に感じてもらうために、「全ての『施設』を快適に、全ての『人』に喜びを。」という新たな経営理念を掲げました。さらに、それを象徴するフレーズとして「周囲から『ハリマで良かった!』が聞こえてくる未来」を設定。いずれも、社員が中心となって考案したものです。
これらの言葉には、お客さま、施設の利用者、入居者、社会、協力会社、株主、そして社員やその家族まで含めた全てのステークホルダーに、「ハリマで良かった!」と心から感じてもらえる未来をつくりたいという思いが込められています。その実現のためには、社員が誇りと満足感を持って働ける環境づくりが不可欠です。良いサービスは、そこで働く人の喜びから生まれ、やがて関係する全ての人を幸せにする。そんな好循環を築いていきたいと考えています。
「アフターハリマ」という取り組みも、社内のつながりを強化するものだったと伺いました。
免出社長
私が入社したのは2021年、ちょうどコロナ禍の真っただ中でした。マスク生活が続く中で、社員の顔と名前を覚えるのも一苦労で、社内のコミュニケーションも著しく希薄になっていました。そこで、経営企画部が中心となって「アフターハリマ」と名付けた社内交流の取り組みをスタートしました。夕方からの社内での懇親会、ランチ、さらにはお茶とスイーツを楽しむ「喫茶版」まで、さまざまな形式で社員同士が交流できる場を設けました。私自身も現場の社員と数多くの対話ができ、互いの人となりを知る貴重な時間になりました。
結果として、社員同士の距離も縮まり、日々の業務の円滑化にもつながっています。このような信頼関係の醸成は、長期ビジョンを実現するための土台であり、組織としての一体感を高める原動力だと実感しています。

代表取締役社長
免出 一郎(めんで いちろう)
1961年生まれ。1983年三菱信託銀行株式会社(現:三菱UFJ信託銀行株式会社)入行。2021年当社入社、取締役常務執行役員。2022年6月代表取締役社長に就任。
「60年以上の信頼関係に、
新たな1ページを加えるために」
横浜銀行とハリマビステムさまは以前からお取り引きがありますが、担当になった当初、どのような課題や可能性を感じていましたか?
可能性の面では、ビルメンテナンスという本業にとどまらず、近年進展しているDXやIT領域、さらには周辺業種とのM&Aといった手法によって、事業領域を拡張し、企業として次のステージへ進む余地があるのではないかと見ていました。
※PBR(Price Book-value Ratio):株価純資産倍率:企業の株価が1株あたり純資産の何倍で取引されているかを示す指標。一般に1倍未満であれば「割安」とされる。
今回のお取り引きは、横浜銀行と横浜キャピタルが共同で設立した「Yokohama Bridgeファンド」がハリマビステムさまの第三者割当増資※を引き受け、株式の一定割合を取得したうえで、上場を維持したまま経営支援を実施し、企業価値を高めるスキームです。このようなお取り引きはハリマビステムさまにとって初めてですが、単なる融資ではなく、経営支援を含むスキームを提案したのはなぜですか。
※第三者割当増資:特定の第三者を対象に、有償で新株を発行して増資する方法。
加納(横浜銀行)
今回ご提案したのは、PIPEs投資※と呼ばれるスキームです。これは資金提供に加え、経営支援もセットになっている仕組みで、私自身が以前、外部ファンドと連携して取り組んだ経験があります。そのとき、この仕組みはお客さまにとって非常に有効なサポートになると実感しました。そうした中で、改めて自分の担当先の中から最適な企業を考えたとき、真っ先に思い浮かんだのがハリマビステムさまでした。
横浜銀行とハリマビステムさまは、60年以上にわたる長い信頼関係を築いてきました。今回の提案が、単なる資金調達にとどまらず、企業価値の向上を本質的に支える施策となれば、両社の関係をより一層深める大きな一歩になると考えました。これまでにない切り口の金融サービスとして、両社の歴史に残るような取り組みにしたいという想いでご提案しました。
※PIPEs(Private Investment in Public Equity)投資:ファンド等が上場企業の第三者割当増資等を引き受ける投資手法の一種。増資の引き受けなどで株式の一定割合を取得したうえで、上場を維持したままでの経営支援を実施し、企業価値(株価)を高めるスキーム。

横浜銀行 横浜中央エリア
法人渉外課 課長
加納 健人(かのう けんと)
2015年横浜銀行入行。中山支店での勤務を経て、2020年8月に横浜駅前支店へ着任。中小企業から上場企業までさまざまな規模・業種のお客さまに対して、資本政策やM&Aなどを含めた幅広いソリューション提案を経験。
横浜キャピタルも、ハリマビステムさまとのお取り引きに先立って複数回の議論を重ねて来たと聞きました。
最初にどういった印象を持ちましたか?
大木(横浜キャピタル)
免出社長をはじめとする経営陣や事業部の皆さまとは、今回の取引以前から「成長討議」という形で対話の機会をいただいてきました。その中で私たちが強く感じたのは、同社の根幹を成す「現場力」の高さです。
ビルメンテナンスという仕事は、日々さまざまな施設の現場で、お客さまの安心と快適を支える業務です。マンション、オフィス、学校など、多様な施設を丁寧に管理するなかで、物件管理マネージャーの皆さまが築き上げてきた高い生産性と顧客満足度は、まさに企業価値の源泉であると感じました。
そうした現場力をどう維持・強化していくのかについても、免出社長を中心に経営陣が真剣に議論されていて、その姿勢に強い使命感を感じました。私たちとしても、そうした想いや強みを信じ、ぜひ一緒に伴走していきたいと思ったのが、今回のご支援のきっかけです。

横浜キャピタル株式会社
戦略投資第3部 ディレクター
大木 翔太朗(おおき しょうたろう)
2007年横浜銀行入行。本店営業部等にて法人渉外担当/課長として中小企業から上場企業まで幅広な取引先の担当を経て、ソリューション営業部にてM&Aのアドバイザリー業務に従事。その他、大手PEファンドへの出向にて複数社への投資を実行、横浜銀行海外業務トレーニーとして同行上海支店のミドル・バックオフィス業務を経験。
「会社と社員の未来のために、
外から学ぶ決断をしました」
企業価値向上に向けて外部から支援を受ける決断について、迷いはありませんでしたか?
免出社長 もちろん迷いはありましたが、決断までに時間はかかりませんでした。昨年12月、横浜キャピタルさんに役員向けに勉強会を開いていただいた際に、私から役員にこう話しました。「外部からコンサルを受けるというのは、経営陣として、特に社長としてこんなこともできないのかと厳しい指摘をされるかもしれない。でも、会社と社員の将来にとって有益な提案が受けられるなら儲けものではないか」と。正直、外から教えてもらうことへのプライドもありました。でも、そんなことを言っている場合ではない。判断軸は常に「会社と社員の未来にとって何が最善か」です。
PIPEs投資というスキームついては、どう評価されましたか?
横浜銀行や横浜キャピタルと議論を重ねる中で、特に印象的だった言葉や提案はありましたか?
免出社長
横浜キャピタルの方が、最初のミーティングでおっしゃった言葉ですね。「PBRを1.5倍から2倍にする自信があります」と、ビシッと言い切られたんです。それには驚きましたし、相当な覚悟を持って提案してくださっているのだと感じました。
また、転換価格※を超えたから終わり、というような投資ではなく、当社の成長を伴走しながら支援してくださると言っていただいたこと。さらに、最終的なイグジットの方法についても、こちらの意向を尊重していただけると。単に株を安く買って高く売って終わりではなく、本当にハリマビステムという会社の未来を思ってくださっている、その誠実さと真剣さを強く感じました。
※転換価格:転換社債型新株予約権付社債(CB)を株式に転換する際に、1株あたりいくらで株式と交換できるかを定めた価格のこと。
横浜銀行として課題抽出や施策提案をおこなう中で、免出社長からどのような想いや姿勢を感じましたか?
加納(横浜銀行)
私が強く感じたのは、ハリマビステムをどう良くしていくか、企業価値をどう高めていくかということに対する真摯な姿勢です。
初めてこのスキームを免出社長にご提案をした際も、メリットとリスクの両面を冷静に整理されたうえで、「これは本当にいい提案だと思う。どこに落とし穴があるのか、逆に聞きたいくらいだ」と率直におっしゃっていただいたのが印象的でした。
スキームの説明を重ねる中で、「今の当社に一番必要な提案だった」と評価いただき、社内での検討・決裁もとてもスムーズに進めていただきました。このスピード感と前向きな姿勢には、我々も強く後押しされました。
今回の提携にあたり、「金融マン」としてではなく「伴走者」として心に決めていたことがあれば教えてください。
加納(横浜銀行)
私がハリマビステムさまを担当させていただいて、もう5年近くになります。その間にお会いした皆さまから感じたのは、同社が掲げるスローガン「ハリマで良かった!」という言葉の裏にある、本気の想いです。会社をどう良くするか、利用者にどう付加価値を届けるか、快適な環境を通じてどう地球環境や地域社会に貢献できるか。そうした課題に真剣に向き合う姿勢に、数多く触れてきました。
ですから今回の提案も、単なる金融商品としてではなく、そうした皆さまの高い志の実現に少しでも役立てるよう、「伴走者」として寄り添う意識で取り組みました。我々の提案が、ハリマビステムさまの更なる飛躍の一助となれば、これに勝る喜びはありません。
ファンドとして「企業に寄り添う」ということについて、横浜キャピタルはどう考えますか?
だからこそ、企業変革や価値向上の主役であるべきなのは、免出社長をはじめとしたハリマビステムさまの経営陣、そして従業員の皆さまです。私たちはその後押しをする存在であり、いわば「触媒」のようなポジションだと考えています。
支援にあたり、「これだけは絶対に伝えたい」と思っていたことはありますか?
大木(横浜キャピタル)
私たちのファンドの設立目的そのものが企業価値の向上であり、それが支援の最大のゴールです。私たちはコンサルティング費用としての報酬をいただいているわけではありません。代わりに、転換社債や新株予約権といった「将来の成長」に賭ける形で対価を受け取っています。これはつまり、ハリマビステムさまの企業価値が本当に高まってはじめて、私たちのリターンが得られるという構造です。
こうした仕組みを実現できているのは横浜銀行グループならではの特徴であり、他の金融機関ではなかなか見られないユニークなソリューションです。ハリマビステムさまの成長ポテンシャルと、私たちの金融・支援機能の相乗効果で、これまでにない高みへと一緒に到達したいと考えています。
「ともに歩むという選択が切り開く、
その先の未来へ」
最後に今回のお取り引きを振り返って、お一人ずつご感想をお聞かせください。
免出社長
今回の取り引きを公表した直後は、「こんな資金調達してどうするのか」といった声も一部にはありました。しかし、投資家説明会を通じてこのスキームの目的と意義を丁寧に説明していく中で、徐々にご理解とご評価をいただけるようになったと感じています。株価に対する過剰な希薄化懸念も生じることなく、むしろ好意的な反応が多かったのは本当にありがたいことです。
加納(横浜銀行)
私たち横浜銀行の支店・本部、そして横浜キャピタルが一丸となって「Yokohama Bridgeファンド」という仕組みを組成し、ハリマビステムさまに第1号案件としてご採択いただけたことは、大変光栄でした。
ただ、この取り組みが企業価値向上という成果に結びつき、最終的には出口までしっかり伴走できてこそ、真の意味でこのスキームの価値が証明されます。今後も引き続き、横浜キャピタルと連携しながら、ハリマビステムさまの成長と変革の実現に向けて全力で支援してまいります。
大木(横浜キャピタル)
確かにこのスキームは、6月に払込が完了したばかり。まさにキックオフを迎えたところでここからが本番、ここからが真価の問われるフェーズです。
私たちはこれからも、免出社長を中心としたハリマビステムさまに全力で寄り添ってまいります。そして最終的には、「横浜キャピタルと横浜銀行で良かった!」と言っていただけるよう、しっかり尽力していきたいと思っております。
※インタビュー内容は2025年7月の取材に基づいています。記事内容および所属は取材当時のものです。
今回のソリューション PIPEs投資※を活用した企業価値向上に向けた協業

解説
①潜在株式を通じた成長資金調達
(株)ハリマビステムが第三者割当により発行する無担保転換社債型新株予約権付社債および新株予約権を、横浜キャピタルと横浜銀行が共同設立した「Yokohama Bridgeファンド」が引き受けることで、企業価値向上への取り組みに必要な資金調達を実施。
②企業価値向上を目的とした経営支援
収益性改善施策推進、営業活動強化、KPI設計、組織見直し等の経営基盤強化の当社の取り組みに対して、高度な経営支援を受けることを目的に、横浜キャピタルと事業提携契約を締結。
※PIPEs(Private Investment in Public Equity)投資:ファンド等が上場企業の第三者割当増資等を引き受ける投資手法の一種。増資の引き受けなどで株式の一定割合を取得したうえで、上場を維持したままでの経営支援を実施し、企業価値(株価)を高めるスキーム。
企業情報
- 会社名
- 株式会社ハリマビステム
- 代表者
- 代表取締役社長 免出 一郎
- 所在地
- 横浜市西区みなとみらい2丁目2番1号 横浜ランドマークタワー16階
- 創業
- 1961年
- 事業内容
- 首都圏を中心としたビル・
建物の管理やマネジメント - ウェブサイト
-
https://www.bstem.co.jp/





