ツヅク、ツナゲル プロジェクト - 井上直樹(総合格闘家)

ツヅク、ツナゲル

NAOKI INOUE 井上直樹

パンチやキックなどの打撃だけではなく、
投げ技、寝技、絞め技、関節技など
あらゆる格闘技の技を総合的に用いながら、
幅広いルールの中で強さを競う『総合格闘技』。

横浜を拠点に世界で活躍する総合格闘家・井上直樹の
日々の過酷な鍛錬で、ストイックなまでに
技を磨き上げる強さの秘訣や、トップレベルで
戦い続ける理由について、伺いました。

Challenging Story

Interview

フルバージョン掲載中

Story 01 もっと強く。その思いが今に

井上直樹選手イメージ

少年時代はどんな子どもでしたか? また小学校1年生で空手をはじめた理由を教えてください。

小学校の担任の先生から「やんちゃだった」と言われたくらいなので、やんちゃな方だったと思います。暴れん坊でした(笑)。とにかく運動が好きで、学校のマラソン大会でも毎回3位以内には入っていたかと思います。そんなぼくに母親が何かを習わせたかったみたいで、近所の空手道場に通うことになりました。当時ケンカで負けたのが悔しくて「強くなりたい」という気持ちもあったんですよね。ただ、コーチが、「強さ」だけではなく「礼に始まり礼に終わる」という礼儀の正しさをちゃんと教えてくださる方で、徐々に「武道」としての「空手」にのめり込むように。

そのうち、ただ一人で黙々と空手の練習をやっているだけだと自分の強さがどのくらいかわからないので、試合に出たいと思うようになっていきました。そうなると今度は「試合で負けたくない」という気持ちが強くなっていくので、どんどん練習に身が入るように。「次の試合も勝ちたい」「もっと強くなりたい」と思う気持ちがその頃から、ずっと今も続いている感じです。

とにかく練習、練習、という感じですね。練習でやったことがほとんど試合に出るというか、練習でやれないことは試合には出せないので、今でも本当に練習しかないなと思っています。

Story 02 最年少記録はあくまでスタートライン

井上直樹選手

プロに移行する時には何か心境の変化やまわりの反応はありましたか? また、日本最年少で *UFC に出場が決まった時の気持ちはどうでしたか?

*アメリカにある世界最大の総合格闘技団体

実はプロの格闘家になりたいという意識はなく、仕事をしながら試合に出られたらいいなというくらいで、そんなに深く考えていなかったです(笑)。なので心境の変化はそんなになかったですね。試合に出はじめると計量で学校を休まないといけないので、それで少しずつクラスメイトや先生が気づきはじめて⋯。でも淡々と練習していました。自分が無口な性格ということもあって、あまり気にならなかったです。

UFCに関しては、小さい時から目指していたので叶った時は嬉しい気持ちはありました。ただ、当時は契約を交わしただけでどこまで世界で通用するのかわからない状況だったこともあり、喜ぶまでには至らなかったですね。UFC には強い選手しかいないと聞いていたので、あくまでスタートラインに立ったというか⋯とにかく楽しみというか⋯。せっかくのチャンスなので世界のベルトを目指したいと思うようになりました。

現在は、アメリカ・フロリダにあるKill Cliff FC という総合格闘技のジムに所属しながら日本の RIZIN(大会)に参戦するなど、国内外でプロの総合格闘家として活動しています。

Story 03 過去の練習が、今日の自分を強くする

井上直樹選手

世界への挑戦や、さらに強い選手との試合に恐怖心はなかったんですか?

なかったですね。子どもの頃からコツコツと積み重ねてきたことが今でも試合に活きていて、自分の技になっているので、試合は自分のやってきたことがどのくらい通用するのか、これまでの練習の成果を試せるチャンスだと思っていますし、とにかく上を目指してがんばってきたので、今は試合のひとつひとつが楽しみです。よく「冷静だ」と言われるんですけれど、試合中って実はそんなに冷静に考えている時間はないんですよね。なので練習を積み重ねて、相手の技に応じて自分は体をどのように動かせば防げるのかとか、練習を重ねて体に染み付けることで、試合でもすぐに応用できているという感じです。

自分よりもフィジカルが強い選手がたくさんいて、環境的にも恵まれている海外のジムに行って気づいたことでもあるのですが、日本には総合格闘技に限らず優秀な選手がたくさんいるので、日本だからこそ吸収できることも多くあって、今は状況に応じて国内外でトレーニングを使い分けています。日本はもちろん、海外でのトレーニングを通じていろいろな技術を知っている方が試合には有利だと思うので、常に広い視野で世界を見ていたいなと思います。

Story 04 とにかく「ツヅケル」ことが大切

井上直樹選手

肉体や精神的にもツラいと思ったことはありませんか? またツラいと感じた場合の解決策は?

結構鈍感なタイプなんで、そんなに精神的に困ることがないんですよね。大抵のことは「なんとかなる」と思っています(笑)。むしろ練習を積み重ねたり、試合に立ち向かうことで、精神面を安定させていると思います。

それにツラいって誰もが思うことだと思うんですよね。だから、練習ひとつひとつを取っても、「当たり前のことを当たり前に」やるしかないのかなと思います。昔からそうですね。壁にぶつかったと感じる時もあったとは思うんですが、その時はただただその時の自分にできることをやっていったという感じですかね。

逃げたくなる時もめちゃめちゃあります。やめたいって思うこともありましたね。子どもの時は特に。でも、その度に「続けること」が大事なんだなって子どもながらに思っていましたね。コーチが怖かったっていうのもありますけど(笑)。

井上直樹選手

Story 05 総合格闘技はスポーツだ

井上直樹選手

この先どういう選手になっていきたいですか?

さらに技を磨いて強い選手になっていきたいっていうのはありますけど、RIZIN に出るようになって、日本で応援してくれるファンの方々もたくさん増えてきていて、その方たちのためにも、どんどん選手としても競技としても知名度をあげて上に上にあがっていけるようにがんばっていきたいと思います。それと、今は日本での試合が多いですけど、自分の活動や発信を通じて、海外にももっと強い、いろいろなタイプの選手がいることも知ってほしいです。格闘技ファンの方たちはもちろん、できれば格闘技を知らない方たちにも、いろいろな格闘技の世界があることを知ってほしいなと思います。アメリカのジムには何十カ国という地域からいろいろなタイプの選手が集まってきていて、それぞれにそれぞれのドラマや闘い方があります。「総合格闘技」というだけあって、いろいろな動きや展開があって見応えも充分だと思います。「ケンカ」のイメージを持たれている方も多いと思いますが、そういった多様性も含めて総合格闘技という「競技」として、気軽に楽しんでもらえたら嬉しいです。

Story 06 挑戦は無限に続く

井上直樹選手

井上選手のゴールはどこにあると考えますか?

今の自分は総合格闘技しかやっていないので、プロの格闘家としてトップを目指す以上は、どんどん強くならないといけないのは当たり前で、どの競技でも言えることだと思いますが「ゴール」ってチャンピオンになることだけじゃないと思うんですよね。もちろんそこがゴールだという人もいていいと思いますが、格闘技の場合はチャンピオンの座を防衛もしないといけないですし、この先、若い世代の人たちもどんどん育って、強くなって立ち向かってくる。だから、強くなる、勝つ、防衛する、その繰り返しだと思うんですよね。となると、この世界には「ゴール」というものはなくて、無限に続いていくものなのかなとぼくは思います。もしくは、もし「ゴール」があるとするならば、歳を取って、肉体的に格闘技を続けられないなと思った瞬間ですかね。それは、終わりなんじゃないかと思います。

Story 07 毎日の積み重ねが大切

井上直樹選手

このインタビューを読んでくれたみなさんへメッセージをお願いします。

ぼくは今、26歳で格闘技をはじめて20年になるんですけど、実は戦うのはあまり好きじゃなくて、ただ、「強くなりたい」という思いから空手をはじめました。それでも20年続けて、プロになって、こうやって人前に出て、試合を観せられるような職業へとついています。

だから、どんなことでも、続けてがんばってさえいれば、本当に、どんなことでも、ゴールをどこに決めようと、自分の決めたことなら、どうにでもできると思います。なのでとにかく続けてやってみるのがいいんじゃないかと思います。

ぼくも続けていくので、みなさんも何か目指したいものがあれば、ぜひ続けてみてください。

Profile

総合格闘家井上直樹(26)

1997年、愛知県生まれ。* Kill Cliff FC所属。小学生で空手をはじめ、18歳でプロデビュー。 世界最大の総合格闘技団体 UFC と日本人最年少で契約し渡米。 2020年より日本の総合格闘技団体 RIZIN に参戦。横浜を拠点に世界で活躍するアスリート。

*アメリカ・フロリダにある総合格闘技ジム

PHOTO GALLERY

  • インタビュー内容は2023年10月の取材に基づいています。記事内容および所属は取材当時のものです。
  • 取材は、新型コロナウイルス感染症対策を徹底したうえでおこなっています。

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