2025.03.21

退職金にも税金がかかる?おさえておきたい種類や計算方法を分かりやすく解説

監修
株式会社MILIZE
作成
2025年3月

退職金は、長年の勤続の成果として支給される大切なお金です。しかし、実はこの退職金にも所得税や住民税が課税されることをご存知でしょうか?給与とは異なる特別な計算方法が適用され、控除や優遇制度も存在します。この記事では、退職金にかかる税金の種類や計算方法、税制優遇措置についてわかりやすく解説します。具体的な計算例も交えてご紹介しますので、手元に残る金額をしっかり把握し、今後のライフプラン設計に役立ててください。

1. 退職金にかかる税金の種類

退職金に課される主な税金は次の2つです。

税金の種類 説明
所得税 所得税とは個人の所得に課税される税金です。退職金の場合は、国税として課税され、退職所得として扱われます。他の所得とは切り離して課税される「分離課税」が適用されます。
住民税 住民税は地方税の一つで、都道府県と市区町村が課す税金です。
地方税として課税され、所得税と同様に退職所得として課税されます。所得税と同様に「分離課税」が適用され、税率は一律10%となっています。

退職金を受け取った場合にも税金がかかりますが、一般の給与所得とは異なり、退職所得控除や分離課税といった税制優遇が適用されるため、税負担は大幅に軽減されます。

2. 退職金の税制優遇とは?

退職金に対する税制優遇は主に次の2つです。

税制優遇 内容
分離課税 通常、所得税は他の所得と合算されて課税されますが、退職金に関しては他の所得と分けて課税され、他の所得による税率の影響を受けません。
退職所得控除 退職所得控除という非課税枠が設けられており、勤続年数に応じて大きな控除額が適用され、課税対象額が大幅に減少します。

3. 退職金における税金の計算方法

具体的な計算方法を、勤続15年、25年、30年で退職一時金を受け取った場合の例でご説明します。退職所得の金額は、原則として、「(収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額)×1/2」として計算されます。また、退職所得控除額は、勤続年数が増えれば増えるほど大きくなります。

  • 勤続年数20年以下の場合:40万円×勤続年数。
  • 勤続年数20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

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勤続年数 退職金 退職所得控除額 課税退職所得金額
(1/2適用後)
15年 1,500万円 40万円×15年=600万円 (1,500万円-600万円)×1/2=450万円
25年 2,000万円 800万円+70万円×5年=1,150万円 (2,000万円-1,150万円)×1/2=425万円
30年 3,000万円 800万円+70万円×10年=1,500万円 (3,000万円-1,500万円)×1/2=750万円

出典:国税庁「退職金と税」

4. 所得税と住民税の計算方法(累進課税の仕組み)

退職金の課税所得に適用される所得税率は累進課税となっており、課税所得が増えるほど税率も上がります。

所得税の累進課税率(令和5年時点)

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課税所得額 税率 控除額
1,000円以上195万円未満 5% 0円
195万円以上~330万円未満 10% 97,500円
330万円以上~695万円未満 20% 427,500円
695万円以上~900万円未満 23% 636,000円
900万円以上~1,800万円未満 33% 1,536,000円
1,800万円以上~4,000万円未満 40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円

出典:国税庁「所得税の税率」

例えば、課税退職所得金額が425万円の場合、
20%の税率適用(425万円×20%=850,000円)
控除額(427,500円)を差し引く(850,000円-427,500円=422,500円)
復興特別所得税(所得税の2.1%)を加算(422,500円×2.1%=8,872円)
最終的な所得税額(復興特別所得税込み):431,372円となります。

まとめ

退職金を受け取るうえで、課税される税金について知っておくことは大切です。まずは勤め先の退職金支給規定を確認し、自身の勤続年数から退職金の見込み額を算出しておきましょう。この記事で紹介した計算式を使えば、所得税や住民税の試算も可能です。老後の生活において、退職金をどの程度生活資金にしていくのか、投資に回すのかなど、ライフプランを立て始めてみてはいかがでしょうか。老後を見据えたライフプランを立て、安心して退職後の生活を迎えましょう。

2025年3月の法令に基づき作成