2024.02.29

住宅ローンの金利種類は、変動金利のままで大丈夫?どのように金利タイプを選択すればよいか、専門家が解説

監修
FP相談ねっと 山中伸枝
執筆
前田菜緒
作成
2022年9月

住宅ローンを契約する時に多くのお客さまは一番金利が低い変動金利を選択する傾向があります。しかし長期の返済期間を考えると、多少金利が高くても固定金利を選択したほうが実は正解だったというケースもあります。この記事では、どのように金利タイプを選択すれば良いのか、考え方を解説します。金利が変動する仕組みや、過去の金利の推移も解説するのでぜひ参考にしてください。

変動金利と固定金利の違いについておさらい

住宅ローンの金利には、変動金利と固定金利(全期間固定型と一定期間の金利を固定する固定金利指定型)があります。変動金利は半年ごとに金利の見直しがあります。ただし、返済額は内訳である元金と利息の割合を調整することにより、約5年間変更ありませんが、変動金利が上昇していた場合は、見直しの際に思いのほか返済額が増える可能性があります。
変動金利の返済ルールについては、別途、下記項目にて詳細をご説明いたします。
一方で固定金利には、全期間固定型と一定期間の金利を固定する固定金利指定型の2種類があります。全期間固定型は当初借り入れ時にのみ選択可能ですが、当初借り入れ時に変動金利を選択した場合や、固定金利指定型を選択し固定金利指定期間満了により変動金利に移行していた場合、変動金利から固定金利指定型に変更可能です。
金融機関によって異なりますが、全期間固定型なら35年まで、固定金利指定型なら3年~10年まで金利を固定できるプランがいくつか用意されています。一般的には固定する期間が長くなるほど金利が高くなります。不動産会社は毎月の返済額が一番低くなる変動金利でシミュレーションをしてお客さまに提示するケースが多いので、変動金利を選択する方が多く、一度選んだらそのまま変更しない方も多いようです。

変動金利の返済ルールについて

上記の通り、変動金利は半年ごとに金利の見直しがありますが、金利変動による急激な返済負担の増加を緩和するため、毎回の返済額は変動金利適用開始日から約5年間変更されないことになっています。返済額は変わりませんが、金利が見直されると返済額の内訳(利息および元金の割合)が変化します。金利が上がると返済額に占める利息の割合が増えてしまい、元金の返済が進まなくなります。逆に金利が下がれば、返済額に占める利息の割合が減る分、元金の返済が進むことになります。
ここでご注意いただきたいのは、金利が大きく上昇し、利息が返済額を上回ってしまう場合です。この場合は、返済しても元金が減らないどころか、返済額を超えた利息分を繰り延べて支払う必要があります。これを未払利息といいます。5年毎の見直しでは、見直し時の金利、元金部分残高、未払利息を加味して返済額が決まりますが、返済額が増加する場合にも、変更前の返済額の1.25倍が限度と決まっています。気が付いたら、元金がほとんど減っていなかったというようなことも起こりえます。

住宅ローンの金利が変わる仕組みは?

住宅ローンの金利が変わる仕組みは変動金利と固定金利で実は違います。まず、変動金利は、短期プライムレートという金融機関が短期間の融資をする際に適用される金利を参考に決定されています。そして、この金利に影響を与えているのが日銀の政策金利です。したがって、変動金利は日銀の政策金利の影響を受けるとも言えます。日銀は、政策金利を景気が良い時には上げて、景気が悪い時には下げて景気の加熱や悪化を防いでいます。
固定金利は一般的に長期金利の影響を受けます。長期金利の代表的なものは、10年物国債の利回りです。10年物国債の利回りは、2016年のマイナス金利の導入によって、同年にマイナスとなり、それ以降も横ばい傾向が続いていました。ところが、2022年に入ってからは、アメリカの長期金利の上昇の影響を受け、日本の長期金利も6年ぶりに上昇しました。それにともないフラット35(※独立行政法人住宅金融支援機構の住宅ローン)の金利も上昇しています。

変動金利が上昇してから固定金利に変更しても手遅れになる?

では、ここで過去の金利推移を見てみましょう。以下は、2002年からの変動金利とフラット35の最低金利の推移です。

住宅ローン金利推移

2022年4月時点

変動金利の場合、各銀行が店頭表示金利から引下げをしているので、上表の金利と実際の住宅ローン金利とは異なります。金利が変動するはずの変動金利ですが、上表を見るとほとんど変動していないことがわかります。これは、短期プライムレートが変動していないためと言えます。
一般的には、長期金利は「将来」の景気や金利を予測して需給によって決められます。つまり、固定金利の金利は将来を先取りしているということです。固定金利は将来の予想で決まり、変動金利は現状で決まりますから、固定金利の方が変動金利より早く動きます。したがって、変動金利が上昇しているなら、固定金利も上昇している可能性が高く、変動金利が上昇してから固定金利に変更すると予想以上に毎月の返済額が増えてしまうので、固定金利に変更するには変動金利が上昇する前に変更を検討する必要があります。

まとめ

住宅ローンは、借り入れ金額が大きいため金利の小幅な上昇でもライフプランに大きな影響を与える可能性があります。変動金利の方が金利が低い時には、毎月の返済額が固定金利より少なくなります。変動金利の返済額は約5年間変わりませんが、当初借入時や返済額前回見直し時より、金利が上昇すると、次回返済額見直しで毎月の返済額も増えるため、将来の返済額が大きく増えてしまったら困るという方は金利が上昇する前に対策を考えておく必要があります。
対策の一つとしては変動金利を利用しながら繰り上げ返済をおこなう方法が考えられます。変動金利の場合は繰り上げ返済の手数料が少なく済みますので、固定金利を使っていると想定してその差額を繰り上げ返済用に貯蓄しておいて、こまめに繰り上げ返済をおこなって住宅ローンの期間を短くしていきます。ただ実際の計画どおりに繰り上げ返済したり、余裕資金を作ったりするのは難しいものです。
変動金利の金利上昇リスクが不安なら固定金利に早めに切り替えておくのも金利上昇リスク回避の一つの方法です。今後のライフイベントを見据えた返済計画を考えるのが重要ポイントです。利用している金融機関のHPなどをチェックしてみましょう。毎月の返済額がどれくらい変わるか気になる人はスマホアプリなどでも簡単に返済シミュレーションができるので一度確認してみるのもオススメです。

横浜銀行の住宅ローンシミュレーションや事前審査もできます

2022年4月の法令に基づき執筆